電子工作でよく使われる「ダイオード」について
初心者の方でも、わかり易くまとめました
電子工作でよく使われる「ダイオード」の「種類や用途」については
コチラで書きました
「ダイオード」とはどんな部品?
ズバリ一言で表わすなら
電流を「一方向」だけしか流さない半導体
です
ダイオードは半導体
ダイオードは、半導体です
一般的な「シリコンダイオード」は
「P型半導体」と「N型半導体」という2種類が使われます
P型、N型とも、原料はシリコン(Si)の高純度結晶です
これに少しの不純物をくわえることで、P型半導体、N型半導体はつくられます
原料は「シリコン」
P型半導体、N型半導体の原料は、シリコン(4価の元素)の結晶です
高純度のシリコン結晶は「真性半導体」と呼ばれています
真性半導体では、電子と正孔がほぼ同数です
そのため、ほとんどの電子が正孔に入ってしまっています
電気(電荷)を運ぶ役割(キャリア)の電子や正孔がほとんどない状態です
実は、シリコンの純結晶は、電気が非常に流れにくいのです
「半導体」とは名ばかりで、絶縁体に近いイメージです
電荷を運ぶ「キャリア」を作るため
シリコン結晶にごく少量の「不純物」を混ぜます
N型半導体
シリコンに、5価の元素(リンP・ヒ素As)を不純物として加えた半導体です
5価の元素は電子が一つ多いので、電子が余ります(過剰電子)
N型半導体では、この過剰電子が電荷を運ぶ「キャリア」になります
P型半導体
シリコンに、3価の元素(ホウ素B・インジウムIn・アルミニウムAl)を不純物として加えた半導体です
3価の元素は電子が一つ少なく、電子が不足して「正孔」ができます
P型半導体では、この「正孔」が電荷を運ぶ「キャリア」になります
ダイオードの構造
一般的なシリコンダイオードは
「P型半導体」と「N型半導体」をくっつけた(接合した)構造をしています
この構造を「PN接合」といいます
PN接合付近では、
「N型の過剰電子」と「P型の正孔」が
互いに引き合って、電荷を運ぶ「キャリアがほとんど無い領域」ができます
この領域を「空乏層」と呼びます
ダイオードに電圧をかける
ダイオードは、印加する「電圧の向き」によって
●電流が「流れる」
●電流が流れない
が決まります
決まった電圧の方向(極性)にしか電流が流れないことが
ダイオードの整流作用というわけです
ダイオードに「順バイアス」をかける
実際のダイオードでは、このように印がついています
ダイオードの
- P型半導体(アノード)にプラスの電圧
- N型半導体(カソード)にマイナスの電圧
をかけると、空乏層が縮小して電流が流れます
そのためには、ある程度の電圧が必要です
順バイアス (Forward Bias)
(順方向電圧と呼ぶこともあります)
順バイアスでは
プラス極(+) = アノード
マイナス極(-) = カソード
の向きに電圧をかけます
ダイオードに順バイアスをかけて、徐々に電圧を上げていくと
図のように、ある電圧から、急激に電流が大きくなります
順方向電圧の実測
手元にあったシリコンダイオードを実測してみました
(型番は不明です・・・スイマセン)
電流(ID) | 順方向電圧(VF) |
100μA | 0.497V |
200μA | 0.531V |
300μA | 0.549V |
500μA | 0.571V |
1mA | 0.607V |
2mA | 0.641V |
5mA | 0.681V |
10mA | 0.718V |
20mA | 0.763V |
50mA | 0.826V |
100mA | 0.890V |
電流が1mA→100mA・・・になっても
VFは0.607V→0.890V・・・
0.283V増加するだけです
電流が100倍になっても
電圧はわずか3.14倍程度しか増えていません
抵抗の場合は、電流が100倍になれば、電圧も100倍になります
このように、ダイオードの順方向電圧(VF)は
電流に対する変化がとても小さいことがわかりますね
ダイオードに「逆バイアス」をかける
逆バイアスとは「順バイアスとは逆向き」に電圧をかけるとです
N型・カソード:(+極)
P型・アノード:(-極)
すると・・・
- N型半導体の電子はプラス極に引き寄せられ
- P型半導体の正孔はマイナス極に引き寄せられます
これにより、空乏層が拡大します
空乏層は「電気的絶縁」です
大きくなれば電流は流れなくなります
(正確にはpA~μAオーダーの非常に少ない電流は流れます)
逆バイアス (Reverse Bias)
(逆方向電圧と呼ぶこともあります)
「順バイアスの逆向き」に電圧をかけることで
電流は、ほとんど流れません
さらに逆バイアス電圧を上げていくと
図のように、ある電圧で急激に大電流が流れます
(ダイオードが破損します)
この電圧を降伏電圧(ブレイクダウン電圧)と呼びます
ダイオードのデータシート(規格表)を見てみる
半導体には規格を示したデータシートがあります
今はネット上で「PDF形式」ファイルなどとして
メーカーサイトからダウンロード、閲覧できる場合が多いです
絶対最大定格 (Maximum Ratings)
絶対最大定格は「絶対に超えてはならない」値です
チェックしておきたい項目は・・・
逆電圧(VR)
逆バイアスで印加できる最大電圧です
許容損失(PD)
ダイオードで消費される電力の最大許容値です
許容損失(PD)= 順電流(IF)×順電圧(VF)
で求められます
順方向電流(IF)
順方向電流の最大値です
図のように「平均最大値」や「瞬間的な最大値」として
複数記載されている場合もあります
電気的特性 (Electrical Characteristic)
電気的特性は、「ある条件における他のパラメーター」を示します
このダイオードでは、順方向電圧の測定値として
- IF=10mA時 VF=0.8V
となっています(ちょっと高めですかね)
また、特性図(グラフ)などが記載されている場合もあります
これは、同じダイオードの特性図ですが
このグラフを読むと
IF=10mA時
VF=0.74V位でしょうか?
グラフは縦軸(電流)が「対数目盛」になっています
このダイオードの「VFとIFの関係」は、
対数(指数)で見れば、とてもリニアなことが判ります
また、他の値のときの関係も
IF=1mA時は・・・VF0.6V位
・・・と、大体の値がわかって便利です
まとめ
ダイオードとは
- 電流を「一方向」だけしか流さない半導体です
- シリコンダイオードは「P型半導体」と「N型半導体」を接合した構造です
- この接合を「PN接合」といいます
順バイアスとは
- アノードに(+)、カソードに(-)の電圧をかけることです
- ダイオードは順バイアスすることで、電流が流れます
- シリコンダイオードでは、順方向電圧(VF)は0.6~0.7V位になります
- ダイオードの電流変化に対する「順方向電圧(VF)」の変化はとても小さいです
逆バイアスとは
- 順バイアスとは「逆向きの電圧」をかけることです
- ダイオードは逆バイアス時、ほとんど電流が流れません
- 逆方向電圧を高くしていくと降伏現象を起こし、大電流が流れます
ダイオードなどの半導体では、メーカーが公表しているデータシートをチェックすることは、とても重要です