トランジスタ3個(片チャンネル)で、「ヘッドホンアンプ」を作り方を紹介します
この記事は
- 簡単にヘッドホンアンプを自作してみたい方
- 電子工作の初心者(あるいは、始めたい方)
- ディスクリートでヘッドホンアンプを自作してみたい方
に向けて書きました
制作の参考として「ブレッドボード」で試作時の「配線図」も載せました
ディスクリートとは
回路に「オペアンプ」などICを使わず、個別の電子部品(トランジスタや抵抗など)だけで構成、制作したものです
そう、オペアンプICを使っていません
「初心者」の方でも大丈夫なように
- シンプル回路(ブレッドボード配線図あり)
- 部品少なめ
- 無調整
です・・・
簡単なヘッドホンアンプなので、歪率はせいぜい1%(1Vrms)を切る位です
市販品は0.01%を切る製品が普通なので、とても太刀打ちできないと思いきや
割りと「普通」に使えます
実はこの記事も、自作した「ヘッドホンアンプ」で音楽を聞きながら書いています
耳あたりがきついこともなく、BGM用には割と良いかも・・・
実験的に鳴らすだけなら、小型ブレッドボード(ハンダ付け不要)で作れる規模です
ヘッドホンアンプの回路
せっかく自作するので、「コンセプト」を決めました
- トランジスタの「基本回路」を使ったシンプル構成
- できれば、小型ブレッドボードに収まる回路規模
- 音質は、音楽が楽しめるレベル(歪率は1%以下)にしたい
いわば、昭和時代の「電気少年」向け電子工作を、「現在入手できる部品」で作る
・・・といった感じでしょうか
回路の仕様を決める
コンセプトから、回路仕様(回路設計)を決めました
- エミッター接地1段(電流帰還バイアス)
- ゲイン約3~4倍
- プッシュプル・エミッタフォロア1段
- バイアス回路は、ダイオードと抵抗で作る
- 位相補償のコンデンサなども無くしたい
調整なしで作れる回路が良いですね
ヘッドホンアンプの回路図
ということで、制作した回路がこちらです

ヘッドホンアンプはステレオ再生です、この回路を2つ作ります
回路はすごくシンプルです、現代アンプの必需品「NFB(負帰還)」もかかっていません
シンプル故に、歪率はオペアンプに遠く及びませんが、それでも1%を切っています
(シミュレートで1Vrms・歪率0.7%を切る程度ですが、目標は達しています)
実際の音質は、音楽が問題なく聴けるレベルです
R3の値をもう少し大きくして、終段のアイドル電流を増せば、歪率はもう少し良くなりますが、発熱がだいぶ増えます
放熱板(ヒートシンク)取付などの対策を取れば可能です
電源は24Vです(ACアダプタを使いました)
※この回路図では簡単に「電源」として記述しています
ヘッドホンアンプの作り方
ブレッドボードは、ハンダ付け不要で回路が作れます
試作や音質調整などにはうってつけ、大変便利です
私も試作では、よくブレッドボードを使っています
ブレッドボードの配線図と部品表です
気に入った設定が見つかったら、ケースなどに入れて仕上げたいですね
その場合、やはり基板に部品をハンダ付する必要があります
そんな場合でも、ブレッド基板などをつかえば、部品配置そのままで、はんだ付けできます
※今回、アンプ部と電源部を別々に「ブレッドボード」に配線しました
アンプ回路 配線図


電源回路 配線図
電源は24VのACアダプタを使いました

抵抗とコンデンサーで簡単なフィルタを作り、LRチャンネルに分けています

全体の配線
完成(仮)配線の全体はこんな感じです

ボリュームを付ける場合
入力にボリュームを付けて、少し絞って使うと、ノイズが気になりません

取り付ける場合は、10KΩ(Aカーブ)2連ボリュームを使います
ボリュームの金属部分(軸など)は、GNDに落とします(ノイズの原因になる)
PC(DAC)やスマホなど、出力がコントロールできる場合は、あえてなくても大丈夫です
動作チェック
動作チェックは電子工作(というか、電気を扱う回路では)必須です
組立が終わったら、ヘッドホンやイヤホンをつなぐ前に
必ず、動作チェックを行います
※安価なものでOKですから、デジタルテスターをご用意下さい
電源ONの前にもう一度、配線と回路図・配線図を突き合わせてチェックしましょう
- トランジスタ向き
- コンデンサーの向き
- ダイオードの向き
- 隣のピンに誤配線していないか
- 未配線はないか
(ベテランでも、配線ミスはよくあります)
1.電源回路をチェック
まず、電源ボードからチェックします
通電前にコンデンサーの向きをもう一度確認しましょう
(ケミコン逆向きミスは、よくやります)
電源単体(出力をつながない)で通電したとき
- LEDが点灯するか?
- 電源の「Lch」「Rch」が24V位でているか(23.8V位でも可)
- 異臭などがしないか
- 2.2Ω、4.7Ωに触れてみて熱くないか
- 電源OFF時、しばらくLEDが点灯するのは正常
2.アンプ回路をチェック
アンプ回路は、電源を接続してチェックします
通電前に、もう一度配線を確認しましょう
通電したら、次のポイントを「デジタルテスタで計測」します
- 出力コンデンサのトランジスタ側(13~14V)
- 10Ωの両端電圧(250mV前後)
- 出力コンデンサのヘッドホン側(0V)
具体的には

写真の「16レーン」と「GND」間の電圧が13~14V
配線ミス、トランジスタが逆、ズレているなどの場合
24V近い電圧が出たり、0Vだったりします
そんなときは、すぐ電源を切って、配線ミスを探しましょう

出力トランジスタの10Ω両端の電圧を図ります
写真では、「13レーンと16レーン」「16レーンと19レーン」です(250mV位)

写真「6レーン」と「GND」間電圧が0Vであることを確認します
※ここに直流が出ていると、ヘッドホンやイヤホンが「最悪焼けます」
各電圧が全て問題なければ、入力とヘッドホンを接続してOKです
※最初は、100円ショップなどのテスト用をつなぎます
どうでしょう?鳴りましたか?
しばらく通電したあと、本命のヘッドホンで聞いてみてください
正常ならば、普通に音楽が聴けます
部品表(パーツリスト)・必要品
ヘッドホンアンプ制作での「部品表・必要なもの」をまとめました
ヘッドホンアンプ基板
部品 | 値 | 数量 | 備考 |
抵抗器 | 33KΩ | 2 | R1 |
4.7KΩ | 2 | R2 | |
1KΩ | 2 | Rc | |
33Ω | 2 | R3(バイアス用) | |
220Ω | 2 | Re | |
10Ω | 4 | R4、R5 | |
470Ω | 2 | R6 | |
ダイオード | 1N4148 | 4 | シリコンダイオード |
トランジスタ | 2SC1815 | 2 | |
TTC015 | 2 | ||
TTA008 | 2 | ||
可変抵抗器 | 10KΩ(A)2連 | 1 | |
コンデンサー | 10μF | 2 | 耐圧25V以上 |
1000μF | 2 | 耐圧25V以上 | |
33μF | 2 | 耐圧25V以上(パスコン) |
電源基板
部品 | 値 | 数量 | 備考 |
抵抗器 | 2.2Ω | 2 | |
4.7Ω | 2 | ||
3.3~10KΩ | 1 | LED用抵抗 | |
発光ダイオード | LED | 1 | |
コンデンサー | 2200μF | 4 | 耐圧25V以上 |
OSコン | 56μF | 2 | 耐圧25V以上 |
ACアダプタ | 24V1A | 1 | ジャック等含む |
その他必要なもの
デジタルテスター
電子工作必需品です、安価なものでOKですから、揃えましょう
他には・・・
- ブレッドボード(あるはユニバーサル基板)
- ステレオジャック
- PINジャック
- ACアダプタ用ジャック
- 配線材
- 100円ショップのステレオイヤホン(テスト用)
※入力にボリュームを付ける場合は(VR10KΩ・A型・2連タイプ)
組立を行うための工具
- ニッパー
- ラジオペンチ
- ピンセット
- ハンダゴテ(ハンダ付けの場合)
- ハンダ(ハンダ付けの場合)
などが必要です
制作後記
今回は「簡単・ディスクリート・ブレッドボードでもOK」
といった自作ヘッドホンアンプを作ってみました
部品もこんな「コンセプト」ですから
抵抗は「カーボン」、大容量のコンデンサーは「普通品」です
興味があれば
- 抵抗を換える(金皮やオーディオ用)
- コンデンサーを換える(品種や電源回路では増量)
- トランジスタを換える
といった具合に、好みの音質を追求していろいろ遊べそうです
試してみても面白いかもしれません
こんなふうに遊べるのも、ブレッドボードならではですね