トランジスタ3個(片チャンネル)の、「ヘッドホンアンプ」です
※(2023/04/09)回路と配線図を見直しました
この記事は
- 簡単にヘッドホンアンプを自作してみたい方
- 電子工作の初心者の方(あるいは、始めたい方)
- ディスクリートでヘッドホンアンプを自作してみたい方
- 自分好みの音質を追求したい(実験したい)方
に向けて書きました
制作の参考として「ブレッドボード」で試作時の「配線図」も載せました
簡単なトランジスタ回路ですから、昔のTV音声品質くらい?
まさしくLo-Fiサウンド!でも、音楽は楽しく聴けます
オペアンプを使ったヘッドホンアンプの記事もあります
ケースに納める時の「ピンジック、ジャック類」などについてはこちらで書いています
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/11/8b2cc2ac60824dcc4f4a30725cd80ecb-320x180.jpg)
本機の特徴
設計の「コンセプト」ですが・・・
- トランジスタの「基本回路」を使ったシンプル構成
- 部品少なめ、無調整
- できれば、小型ブレッドボードに収まる回路規模
- 音質は、音楽が楽しめるレベル(歪率は1%以下)にしたい
- 簡単回路で、部品交換を楽しみたい
いわば、昭和時代の「電気少年」向け電子工作を、「現在入手できる部品」で作る
・・・といった感じでしょうか
回路の仕様
コンセプトから、回路仕様(回路設計)を決めました
- エミッター接地1段(電流帰還バイアス)
- ゲイン約3~4倍
- プッシュプル・エミッタフォロア1段
- バイアス回路は、ダイオードと抵抗で作る
- 無調整
- 熱結合とか難しいことは無し
回路はディスクリート(オペアンプなどICを使わず、個別のトランジスタや抵抗などで構成)です
簡単なヘッドホンアンプなので、歪率はせいぜい1%(1Vrms)を切る位です
市販品は0.01%を切る製品が普通なので、とても太刀打ちできないと思いきや
割りと「普通」に使えます
耳あたりがきついこともなく、BGM用には割と良いかも・・・
実はこの記事も、自作した「ヘッドホンアンプ」で音楽を聞きながら書いています
ヘッドホンアンプの回路
ということで、制作した回路がこちらです
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/04/2023-04-09_02h55_30-1024x708.png)
ヘッドホンアンプはステレオ再生です、この回路を2つ作ります
電源は24Vです(ACアダプタを使いました)
※この回路図では簡単に「電源」として記述しています
あえてLo-Fiっぽい雰囲気を出すため
- 抵抗器は全てカーボン抵抗
- コンデンサーは普通品
- 初段回路に100pFの位相補償
回路はすごくシンプルです、現代アンプの必需品「NFB(負帰還)」もかかっていません
シンプル故に、歪率はオペアンプに遠く及びませんが、それでも1%を切っています
(シミュレートで1Vrms・歪率0.7%を切る程度ですが、目標は達しています)
実験的に鳴らすだけなら、小型ブレッドボード(ハンダ付け不要)で作れる規模です
これでも現代のヘッドホンを使うと結構良い音で楽しめます
オーディオはスピーカーやヘッドホンを換えると、8割音が変わる
というのは、あながち間違えでないかもしれません
ヘッドホンアンプの作り方
ブレッドボードの配線図です
ブレッドボードは、ハンダ付け不要で回路が作れます。試作や音質調整などには「うってつけ」大変便利です
アンプ回路 配線図
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/04/Bread_Shote2-edited.jpg)
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/04/2023-04-09_03h25_17-1024x559.jpg)
※電源は24VのACアダプタを使いました
部品表(パーツリスト)・必要品
ヘッドホンアンプ制作での「部品表・必要なもの」をまとめました
部品 | 値 | 数量 | 備考 |
抵抗器 | 33KΩ | 2 | |
7.5KΩ | 2 | ||
4.7KΩ | 2 | ||
2.2KΩ | 2 | ||
1KΩ | 4 | ||
220Ω | 2 | ||
33Ω | 2 | ||
10Ω | 4 | ||
ダイオード | 1N4148相当品 | 4 | 小信号シリコンダイオード |
トランジスタ | 2SC1815 | 2 | |
TTC015 | 2 | ||
TTA008 | 2 | ||
コンデンサー | 1000μF | 2 | 耐圧25V以上 |
33~100μF | 2 | 耐圧25V以上 | |
10μF | 2 | 耐圧25V以上 | |
560pF | 2 | フィルムコンデンサ | |
100pF | 2 | フィルムコンデンサ |
その他必要なもの
デジタルテスター
測定に必要です、安価なものでOKです
他には・・・
- ブレッドボード(あるはユニバーサル基板)
- ステレオジャック
- PINジャック
- ACアダプタ用ジャック
- 配線材
- 100円ショップのステレオイヤホン(テスト用)
組立を行うための工具
- ニッパー
- ラジオペンチ
- ピンセット
- ハンダゴテ(ハンダ付けの場合)
- ハンダ(ハンダ付けの場合)
などが必要です
動作チェック
※安価なものでOKですから、デジタルテスターをご用意下さい
電源ONの前にもう一度、配線と回路図・配線図を突き合わせてチェックしましょう
- トランジスタ向き
- コンデンサーの向き
- ダイオードの向き
- 隣のピンに誤配線していないか
- 未配線はないか
(配線ミスはよくあります)
1.電源をチェック
通電前にコンデンサーの向きをもう一度確認しましょう
(ケミコン逆向きミスは、よくやります)
- 電源の「Lch」「Rch」が24V位でているか(23.8V位でも可)
- 異臭などがしないか
2.アンプ回路をチェック
通電したら、次のポイントを「デジタルテスタで計測」します
- 出力コンデンサのトランジスタ側(13~14V)
- 10Ωの両端電圧(250mV前後)
- 出力コンデンサのヘッドホン側(0V)
※写真は試作検討時のものですが、測定箇所は同じです
出力コンデンサのトランジスタ側(13~14V)
![ディスクリートヘッドホンアンプ
動作確認ポイント(その一)](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/03/check01-1024x811.jpg)
写真の「16レーン」と「GND」間の電圧が13~14V
配線ミス、トランジスタが逆、ズレているなどの場合
24V近い電圧が出たり、0Vだったりします
そんなときは、すぐ電源を切って、配線ミスを探しましょう
10Ωの両端電圧(250mV前後)
![ディスクリートヘッドホンアンプ
動作確認ポイント(その2)](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/03/check02-1024x811.jpg)
出力トランジスタの10Ω両端の電圧を図ります
写真では、「13レーンと16レーン」「16レーンと19レーン」です(250mV位)
出力コンデンサのヘッドホン側(0V)
![ディスクリートヘッドホンアンプ
動作確認ポイント(その3)](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/03/check03-1024x811.jpg)
写真「6レーン」と「GND」間電圧が0Vであることを確認します
(テスターによっては誤差で、少し電圧が観測される場合があります、5mV以下なら問題ありません)
※ここに直流が出ていると、ヘッドホンやイヤホンが「最悪焼けます」
各電圧が全て問題なければ、入力とヘッドホンを接続してOKです
※最初は、100円ショップなどのテスト用をつなぎます
どうでしょう?鳴りましたか?
しばらく通電したあと、本命のヘッドホンで聞いてみてください
グレードアップしたい方は
自分なりの「オリジナリティー」を加えたい方もいると思います
いろいろ試してみるのも、自作の醍醐味ですから、いくつかのヒントを挙げました
入力にボリュームを付ける
入力にボリュームを付ける事もできます、CDプレイヤーなどから入力を取る場合は必要です
その場合は、入力の回路を変更します
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/04/2023-04-09_04h37_37.png)
ボリュームは「10KΩ(Aカーブ)2連ボリューム」を使います
基板取付タイプでも、普通のボリュームどちらでも大丈夫です
オーディオ用のものも市販されています(本機での効果は疑問ですが・・・)
![入力ボリューム拡大写真](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/03/2023-03-13_21h53_43-1024x572.jpg)
ポイントとしては
ボリュームの金属部分(軸など)は、GNDに落とします(ノイズの原因になる)
ハンダ付けしたい場合
ケースなどに入れて仕上げたい場合は、部品をハンダ付する必要があります
そんな場合でも、ブレッド基板などをつかえば、部品配置そのままで、はんだ付けできます
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/11/DSC_0008-1024x576.jpg)
ブレッド基板は、ブレッドボードと同じ配線パターンの基板です
写真のものは秋月電子で扱っています
サンハヤト純正のブレッド基板もあります
もちろん、ユニバーサル基板や、できる方はPC板を起こしてもOKです
(そんなスキルの方は、見ていないと思いますが・・・)
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/04/DSC_0013-1-1024x576.jpg)
今後の実験で、いくつか使いたかったので、作ってしまいました
電源を強化する
ヘッドホンアンプに限らず「オーディオの電源」は音質にかなり影響があります
もっと低域がほしい場合などは、電源を強化してみると効果があります
参考:電源ボード
![ヘッドホンアンプ電源基板(ブレッドボード配線図)](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2023/03/POW_Simple-1024x683.jpg)
抵抗とコンデンサーで簡単なフィルタを作り、LRチャンネルに分けています
ポイントは
- 電源出力に大容量コンデンサを追加(低域の強化)
- アダプタ入力にOSコンを追加(高域強化)
※この辺は、コンデンサの品種、容量などによって、かなり音質変化があります
※アンプ回路のパスコンを増量したり、フィルムコンを並列に入れたりするのも効果があります
※できる方は、安定化電源化するという方法もあります
アンプ回路の部品をいじる
アンプ回路の部品を交換するのは、まあ、王道の改造ですね
- 入力コンデンサ(10μF)のを換える
- 出力コンデンサ(1000μF)を換える
- 抵抗器を換える
- 位相補償コンデンサを換える
- トランジスタを換える
入力コンデンサ(10μF)のを換える
入力のカップリングコンデンサの品種を換えると、音質に影響があります
0.1μF程度のフィルムコンデンサを並列に入れる方法もあります
※値を換えるのは、上級者向きです
出力コンデンサ(1000μF)を換える
出力コンデンサを換えると、やはり音質が変わります
- 品種をオーディオ用などにすると、趣がかなり変わります
- 1~10μF程度のフィルムコンデンサを並列に入れる方法もあります
- コンデンサの値を増量(2200μF)することもできます
※値を減少させると、低域が減る場合があります
抵抗器を換える
回路に使われている「カーボン抵抗器」を換えると、音質が変わります
例えば、金属皮膜抵抗(キンピ)や、オーディオ品種に変更ですね
※値を変えると、動作に影響があります
位相補償コンデンサを換える
上級者向けですが、初段トランジスタに入っている100pFを変えることもできます
基本的には値を減らすと、音質的には有利ですが安定性も悪くなります
実際には、2SC1815などの汎用トランジスタでは、無くても発振しませんでした
※高周波用トランジスタを試したところ、不安定な品種もあり、22pF位にしておくのが無難かもしれません
トランジスタを換える
こちらも、トランジスタの規格がわかる方向けです
トランジスタを変えることでも、かなり変化があります
制作後記
今回は「簡単・ディスクリート・Lo-Fi風味・ブレッドボードでもOK」
といった自作ヘッドホンアンプを作ってみました
部品も「好みの音質」を追求していろいろ遊べそうです
シンプル回路ゆえ、いろいろ試してみるのも面白でしょう
こんなふうに遊べるのも、ブレッドボードを使った電子工作ならではですね