ヘッドホンアンプ

昭和レトロな回路で「ヘッドホンアンプ」を作る

昭和時代、トランジスタを使ったステレオアンプが「石アンプ」と呼ばれていた頃の回路を参考に、ヘッドホンアンプを作ってみました

参考にした回路の年代は1960年後半から1970年初め頃です

まさに当時のニューモデルですから、いわば、S70年代からS80年代に鳴っていた、ステレオアンプの回路ですね

トランジスターも品種によっては、日本メーカーで廃版となったものが、セカンドソース品として近年格安で入手できます

ノスタルジ感に浸るもよし、現代風なテイストに仕上げるもよしでしょうか

当時の特色ある回路たち

1965年頃からシリコントランジスタが大量供給され、それまで、真空管(球)アンプの色を残していたトランジスタ(石)アンプの回路が、急速に進化して行ったと言われています

いわば「トランジスタ独自の強み」を生かした回路が、どんどん投入されたわけです

そんな黎明期の石アンプで特色ある回路やよく使われた回路

  • EE帰還回路
  • 段間直結回路
  • 準コンプリメンタリー

をヘッドホンアンプに使ってみました

EE帰還回路

EE帰還回路とは、終段のエミッターから初段のエミッターに帰還(NFB)をかける回路です

当時のトランジスタアンプ「フォノイコライザー」でよく使われた回路で

多くは「電圧増幅段2段(NPNとPNPの回路)+エミッタフォロワ」構成

とされることが多かったようです

  • 異極のトランジスタを使うことで、電源電圧を効率よく使える
  • 終段にバッファを設ける(トランジスタは小型で大電流制御が容易)

といった、トランジスタの強みを生かした回路ですね

フォノイコライザーでは、動作点を決める「DC帰還」とRIAA特性を得る「AC帰還」が並列で使われたようです

ヘッドホンアンプはフラットアンプですから、DC帰還だけのシンプル回路になりました

現在は、オペアンプなども含め、初段は差動回路を使う場合がほとんどです

EE帰還型は、より帰還(NFB)をかけやすい回路に進化していく途中段階ともいえますね

段間直結回路

段間直結回路は、各増幅段をつなぐコンデンサーを除去し、動作点をNFBで一括コントロールしています(前述のDC帰還)

当時、直流増幅分野でのノウハウをアンプ回路に使ったアイデアと言われています

初めは温度に敏感なトランジスタ回路の「苦肉の策」的見方をされたようですが

実は、段間を直結する最大のメリットは、特性が不安定になる要因「コンデンサ」を減らせることです

トランジスタは入力抵抗が低く、各段間のコンデンサは大きな容量が必要でした

つまりは電解コンデンサ「ケミコン」です

ケミコンはバラツキが大きく(現在でも±20%は普通)寄生発振や、想定外の周波数ピークなど、不安定要因として、なるべく減らしたい部品でした

真空管アンプの動作点は、安定でそのような必要がなく、段間のコンデンサも入力抵抗が非常に高いため、特性の良いフィルムコンデンサなどを使えたわけです

その後、ステレオアンプがでは多種多様な回路が採用され、DCアンプやHiFiアンプなど、信号回路からコンデンサ(特にケミコン)がどんどん追放されていきます

準コンプリメンタリー

ヘッドホンアンプの終段は、当時のパワーアンプで使われた「準コンプリメンタリー回路」です

コンプリメンタリー・エミッターフォロアでは、異極トランジスタ(NPNとPNP)を組み合わせることが普通です

当時はPNP型のパワートランジスタが無く、NPNのパワートランジスタで代用する回路を構成したのです

このような回路を「準コンプリメンタリー(準コン)」と呼んでいました

ちなみに、通常のコンプリペアで組んだものは「純コンプリメンタリー(純コン)」と呼ばれたようです

どちらも読みが「ジュンコン」なので

  • 準コン=ジュンコン
  • 純コン=ピュアコン

などと呼んでいた方もいたようです

「準コン」回路は、安定性や歪率が「純コン」回路に劣るため現在の製品では、まずお目にかかれない回路です

おまけ:フォノイコライザーの役目は・・・

当時はステレオアンプの入力ソースとしては、レコードが主流です

そのため入力には、フォノイコライザー回路が必須でした

フォノイコライザーの役目は

一つは、レコード針(カートリッジ)から取り出した信号は非常に小さく、これを他の入力(ラインやラジオ入力)と同等レベルまで増幅すること

もう一つはRIAA規格のフィルターを通すことです

レコードは音声をレコード盤の「溝」の振幅として記録するのですが、そのまま記録すると

  • 低音では振幅が大きくなる可能性(隣にはみ出し)
  • 高音は振幅が小さい場合が多く、ノイズが乗りやすい

そのため低域を小さく、高域を大きくする処置をしてから録音(カッティング)されます

その周波数カーブ(いわばフィルター)がRIAAという規格ですね

再生時には、逆RIAA特性のフィルターを通すわけで、これがEQ(フォノイコライザー)というわけです

回路図

今回のヘッドホンアンプ回路図です

回路の説明

電圧増幅段が2段(NPN+PNPのエミッタ接地)とエミッターフォロアで構成しています

帰還(NFB)は終段のエミッターから初段のエミッターに戻される「EE帰還型」です

終段は2段の準コンプリメンタリー・エミッターフォロアです

回路図は1チャンネル分ですから、ステレオ再生には2セット必要です

R1、R2は単なるアッテネーターです、入力にボリュームを付けるなら外してください、ボリュームVRは10KΩ(A型)をすすめます

C1は外来ノイズ(デジタルノイズや電波など)低減目的で入れてあります

ダイオードは1N4148としてありますが、小信号用のもの(シリコン)なら大丈夫です

アイドリング電流調整のRV1(100Ω)は、多回転型が便利です

部品表

本機の部品表です(注)片チャンネル分です

部品数量備考
抵抗器47kΩ2R3,R4
10KΩ1R1
4.7KΩ1R7
1.8KΩ1R16
1KΩ2R2,R15
560Ω1R9
470Ω1R5
220Ω3R6,R10,R12
100Ω2R17,R18
75Ω1R8
33Ω1R11
10Ω2R13,R14
半固定抵抗RV11100Ω、多回転型
ダイオード1N4148相当品3小信号シリコンダイオード
トランジスタ2SC18152Q1,Q3
2SC10152Q2,Q4
TTC0152Q5,Q6
コンデンサー2200μF1C8 耐圧25V以上
1000μF1C9 耐圧25V以上
100μF2C3,C6 耐圧25V以上
33μF1C4 耐圧25V以上
10μF1C2 耐圧25V以上
0.1μF1C7
330pF1C1
100pF(※)1C5
ACアダプタ24V品1

※C5は好みから「スチコン」100pFを使いました、47pFのディップマイカなどでもOKです

実際はもっと小さな値(33pなど)でも大丈夫ですが、入手性からセラミックコンデンサになりがちです、その場合は「CH品」「C0G品」などをすすめます

(円盤型のセラコンは、やめたほうが良いでしょう)

トランジスタは、割りといろんなトランジスタが使えます

電圧段、ドライバー段のトランジスター

  • 2SC1815/2SA1015
  • 2SC945/2SA733
  • KSC1845/KSA992
  • 2SC2240/2SA970

入手性や価格からこの辺でしょう、結構色々行けます

ピン配列を合わせれば2N5551/2N5401などもイケます

Q1とQ2はコンプリペアの必要はありませんので、いろいろ試すと面白いです

2SC373や2SA495などの古典石も、探せばまだ入手できるようです

※初段Q1は、接合型NchFETも使えます

  • 2SK30A(GR)
  • 2SK117(BL)
  • 2SK170(BL)
  • 2SK2881(E)

E=S、C=D、B=Gとして差し換え、動作実験済みです(ピン配列に注意)

FETの足は「SGD配列」です、トランジスタの「ECB配列」に合わせるにはちょっと足をひねる必要があります

初段のコレクタ(ドレイン)電流は2.5mA位です、ランクはGR品以上必要です

終段のトランジスタは、1Aクラス以上なら普通に使えそうです

2SD880(ピン配列逆)はOKでした

2SD2012(ピン配列逆)のような石で組むのも面白いでしょう

この辺は、自作ゆえの楽しみでもあります

現行の石を使うもよし、奮発してレトロ石を入手するもよしです・・・

その他必要なもの

デジタルテスター

測定に必要です、安価なものでOKです

他には・・・

  • 6PINブレッドボード(あるはユニバーサル基板)
  • ステレオジャック
  • PINジャック
  • ACアダプタ用ジャック
  • 配線材
  • 100円ショップのステレオイヤホン(テスト用)

組立を行うための工具

  • ニッパー
  • ラジオペンチ
  • ピンセット
  • ハンダゴテ(ハンダ付けの場合)
  • ハンダ(ハンダ付けの場合)

などが必要です

ヘッドホンアンプを組み立てる

試験も兼ねて、ブレッドボードに組みました

ブレッドボードでは、部品交換が容易です、カットアンドトライには大変適しています

配線図

サンハヤト製の6PINタイプ(ニューブレッドボード)に配線しました

片チャンネル=1枚ですので、ステレオ再生には2セット必要です

RVは組込前に中点(テスターで測定)付近にしておきます

抵抗器はカーボンでもOKです、私は信号が通る部分は、金属皮膜抵抗にしました

トランジスタですが、私は・・・

  • Q1=2SC945、Q2=2SA733
  • Q3=2SC1815、Q4=2SA1015
  • Q5、Q6=TTC015

にしてみました

コンデンサは、C2とC9がESコン、ほかは普通のケミコンです

シャーシなどに組み込みたい場合、サンハヤトから6PINタイプのブレッド基板が販売されています、もちろん、ユニバーサル基板に実装してもOKです

測定と調整

完成時の測定と、アイドリング電流調整を行います

最初に

出力コンデンサ(C9)のトランジスタ側の電圧を測ります

配線図では、

ブレッドボードの「5レーンまたは13レーン」と「電源のマイナス側」

をテスターで測ります、11V前後なら正常です

※配線ミスなどがあると、24V近い電圧が出たり、0Vだったりします

アイドリング電流の調整

Q5、Q6のエミッタ抵抗(10Ω)両端の電圧を測ります

トランジスタQ5は「R13両端の電圧」(10レーンと13レーン間の電圧)

トランジスタQ6は「R14両端の電圧」(10レーンと14レーン間の電圧)

正常なら、どちらもほぼ同じ電圧になります

次にRVを回して、だいたい200mV前後にします

音出し

テスト用イヤホン(100円)をつないで、音を聞いてみます

特に、問題なければOKです

無音時のノイズは、ほとんど聞こえないはずです

制作後記

正直、あまり期待していなかったのですが、

音が良かった(自分好みという意味です)・・・

なんといいますか、オペアンプなどに比べて「音が素直」な気がします

抵抗、コンデンサ、トランジスタ交換で「遊べる要素」も多く、ブレッドボードで仮組みするだけでも、かなり楽しめました

特にQ1は接合型FET(Nch)がほぼそのまま動作します

よろしければ、作って遊んでみて下さい