ヘッドホンアンプ

【トラブルシュート】自作アンプの発振対策を考える

自作には、失敗やトラブルがつきものです

実験してOKであっても、実際の組み立でトラブルが発生するケースは多々あります

実は・・・

前回投稿の「改良レトロHPA」が音的に気に入ったので

早々、ケースに組み上げようとPC板(プリント基板)を起こしました

その時のトラブル(異常発振)について、覚書程度にまとめました

電源を入れてみると・・・

組み上げて、電源を入れる

一番緊張するときですね、成功なら良いのですが・・・

今回は、あからさまに、おかしい現象が起きていました

  • 電源の電流が流れすぎ
  • アイドリング電流を調節できない

もうこの段階でダメなんですが

発振器とオシロスコープをつなぐと

完全に発振しています

これは、割とマシな波形をキャプチャしましたが、もうミミズがのたくった波形の連続でした

原因は終段エミッタフォロアの異常発振

色々試していると、次のことがわかりました

  • C6(BIAS用トランジスタのコンデンサ)に触ると安定する
  • Q5・Q6を変更すると安定する

1つ目は、C6付近に触っていると、安定した波形が得られることです

C6はBIASトランジスタのE-C間に入っているコンデンサ(0.1u)です

この辺から、終段のエミッタフォロアが怪しいと感じました

もし、終段のエミッタフォロアが原因なら、入り口のQ5・Q6のB-C間に小容量(10pF程度)のコンデンサをつければ、効くはずです

本来なら、セラコンをはんだ付けするのが正攻法ですが、

今回はベース/コレクタ間の寄生容量(Cob)が大きなトランジスタに変えてみました

バッチリ発振が止まりました

使ったトランジスタは、2SD882/B772です(2SD667/B647でもOKでした)

それぞれのトランジスタのCobは、標準値で

  • 2SC1815(2.5pF)
  • 2SD667(12pF)
  • 2SD882(45pF)

PNP型はNPN型よりCobが大きいので、コンプリペアのNPN型のみ記載しました

2SD882/B772は、秋月電子さんでユニソック製のものが入手可能です

2SD667/B647は、アイテンドーさんでセカンドソース品を購入しました

発振対策として

Q5・Q6のベース/コレクタ間に

発振防止のコンデンサーを入れておくのが有効です

(回路図は参考です、部品番号は無視して下さい)

5pF~15pFくらいのセラミックコンデンサー(CH品、C0H品)が良いですね

オーディオにセラコンはちょっとという方は、Cobの大きめなTRをオススメします

他にもある、発振防止対策

実際には、回路全体の安定も含めて対策はしていたのですが・・・

まあ、今回は良い勉強になりました・・・

ちょっとした変更が、トラブルの引き金?かもしれない・・・

せっかく基板を起こすので、ちょっと部品の値や、配置を変更したのです

  • 最終段のReを「10Ω→0.47Ω」
  • BIASのトランジスタを熱結合できるように配置
  • BIASのトランジスタを変更(C1815→C3423)

また、部品を変更しなくても、プリント基板に配置したことで、ブレッドボードとは「配線距離や寄生容量」が変わります

些細なことが、トラブルを呼び込む原因なんですね

実際には、発振対策としてベースに100Ωを入れてはいました

トラブルシュートには「測定」と「知識」が大切

トラブル発生時には何が起こっているか、知らないといけません

そのためには、道具や知識が欠かせませんね

電気は目に見えない

電気は目に見えません、「測る道具」が必要です

テスターがあれば

  • 電流が流れすぎている
  • アイドリング電流が調整できない

といった最低限のことがわかりますし、オシロスコープと発振器があれば

波形がおかしいだけでなく、回復(正常動作)もわかります

デジタルテスターは、自作派は「ぜひとも」揃えたい測定器です

また、オシロスコープも安価で、発振器(OSC)内蔵のものもあります

安価なものは、測定精度が気になりますが、それよりも「電気を波形として見れる」ということが重要ではないかと思います

昔の「ステレオアンプ自作本」が役に立つ

電子回路の設計というと、何だか難しい数式ばかりの気もしますが

少々前(昭和時代?)のアンプ自作派のための書籍などは、難しい理論より実践的な手法を解説した良書もたくさんあります

ラジオ自作やアンプ自作は、案外メジャーな趣味だったようで、数学に弱い人でも、わかりやすく書かれた書籍が、割とあります

古書も含め、今でも入手可能のようですので、興味があれば一読をオススメします

最後に

終段のエミッタフォロア発振は、アンプトラブルとしては、よくあるようです

実際、発振を起こすと

  • 電源の電流が流れすぎ
  • アイドリング電流を調節できない
  • 終段のトランジスタが異常に熱い、最悪は破損する
  • 「キーン」といった音がする場合もある
  • 最も最悪なケースでは、ヘッドホンやスピーカーにダメージ

といった現象が起こります

過去に私も、自作アンプが異常発振で壊れました

終段に大枚はたいて買った日立の「MOS・FET」を使っていたので、ショックでした

組み上げた当初は、特に異常も見られず、テスターでアイドル電流を調整して、音楽を流し、悦に入っていましたが、数日して突然沈黙・・・

振り返れば、当時は測定器もテスターぐらいしかなく

発振防止用の素子やパスコンも、いい加減につけていたように思います

今、考えれば、たかが数pF程度のセラミックコンデンサーでも、無意味な訳がないのですが

そんな過去の思い出から、ちょっと覚書程度の内容ですが、書いておこうと思いました

皆様の、参考になりましたら、幸いです