電子工作でよく使われる「ダイオード」について
初心者の方でも、わかり易くまとめました
電子工作でよく使われる「ダイオード」の「種類や用途」については
コチラで書きました
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/964d61086a9d5b517ed4d3f3b0351faf-1-320x180.jpg)
「ダイオード」とはどんな部品?
ズバリ一言で表わすなら
電流を「一方向」だけしか流さない半導体
です
ダイオードは半導体
ダイオードは、半導体です
一般的な「シリコンダイオード」は
「P型半導体」と「N型半導体」という2種類が使われます
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/Semi-1024x576.png)
P型、N型とも、原料はシリコン(Si)の高純度結晶です
これに少しの不純物をくわえることで、P型半導体、N型半導体はつくられます
原料は「シリコン」
P型半導体、N型半導体の原料は、シリコン(4価の元素)の結晶です
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/si-1024x576.jpg)
高純度のシリコン結晶は「真性半導体」と呼ばれています
真性半導体では、電子と正孔がほぼ同数です
そのため、ほとんどの電子が正孔に入ってしまっています
電気(電荷)を運ぶ役割(キャリア)の電子や正孔がほとんどない状態です
実は、シリコンの純結晶は、電気が非常に流れにくいのです
「半導体」とは名ばかりで、絶縁体に近いイメージです
電荷を運ぶ「キャリア」を作るため
シリコン結晶にごく少量の「不純物」を混ぜます
N型半導体
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/As-1024x576.jpg)
シリコンに、5価の元素(リンP・ヒ素As)を不純物として加えた半導体です
5価の元素は電子が一つ多いので、電子が余ります(過剰電子)
N型半導体では、この過剰電子が電荷を運ぶ「キャリア」になります
P型半導体
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/B-1-1024x576.jpg)
シリコンに、3価の元素(ホウ素B・インジウムIn・アルミニウムAl)を不純物として加えた半導体です
3価の元素は電子が一つ少なく、電子が不足して「正孔」ができます
P型半導体では、この「正孔」が電荷を運ぶ「キャリア」になります
ダイオードの構造
一般的なシリコンダイオードは
「P型半導体」と「N型半導体」をくっつけた(接合した)構造をしています
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/PN-1024x576.png)
この構造を「PN接合」といいます
PN接合付近では、
「N型の過剰電子」と「P型の正孔」が
互いに引き合って、電荷を運ぶ「キャリアがほとんど無い領域」ができます
この領域を「空乏層」と呼びます
ダイオードに電圧をかける
ダイオードは、印加する「電圧の向き」によって
●電流が「流れる」
●電流が流れない
が決まります
決まった電圧の方向(極性)にしか電流が流れないことが
ダイオードの整流作用というわけです
ダイオードに「順バイアス」をかける
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/Fbias-1024x576.png)
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/2022-12-10_15h12_11-1024x725.jpg)
実際のダイオードでは、このように印がついています
ダイオードの
- P型半導体(アノード)にプラスの電圧
- N型半導体(カソード)にマイナスの電圧
をかけると、空乏層が縮小して電流が流れます
そのためには、ある程度の電圧が必要です
順バイアス (Forward Bias)
(順方向電圧と呼ぶこともあります)
順バイアスでは
プラス極(+) = アノード
マイナス極(-) = カソード
の向きに電圧をかけます
ダイオードに順バイアスをかけて、徐々に電圧を上げていくと
図のように、ある電圧から、急激に電流が大きくなります
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/D_Forward-1024x576.png)
順方向電圧の実測
手元にあったシリコンダイオードを実測してみました
(型番は不明です・・・スイマセン)
電流(ID) | 順方向電圧(VF) |
100μA | 0.497V |
200μA | 0.531V |
300μA | 0.549V |
500μA | 0.571V |
1mA | 0.607V |
2mA | 0.641V |
5mA | 0.681V |
10mA | 0.718V |
20mA | 0.763V |
50mA | 0.826V |
100mA | 0.890V |
電流が1mA→100mA・・・になっても
VFは0.607V→0.890V・・・
0.283V増加するだけです
電流が100倍になっても
電圧はわずか3.14倍程度しか増えていません
抵抗の場合は、電流が100倍になれば、電圧も100倍になります
このように、ダイオードの順方向電圧(VF)は
電流に対する変化がとても小さいことがわかりますね
ダイオードに「逆バイアス」をかける
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/Bbias-1024x576.png)
逆バイアスとは「順バイアスとは逆向き」に電圧をかけるとです
N型・カソード:(+極)
P型・アノード:(-極)
すると・・・
- N型半導体の電子はプラス極に引き寄せられ
- P型半導体の正孔はマイナス極に引き寄せられます
これにより、空乏層が拡大します
空乏層は「電気的絶縁」です
大きくなれば電流は流れなくなります
(正確にはpA~μAオーダーの非常に少ない電流は流れます)
逆バイアス (Reverse Bias)
(逆方向電圧と呼ぶこともあります)
「順バイアスの逆向き」に電圧をかけることで
電流は、ほとんど流れません
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/D_Reverse-1024x576.png)
さらに逆バイアス電圧を上げていくと
図のように、ある電圧で急激に大電流が流れます
(ダイオードが破損します)
この電圧を降伏電圧(ブレイクダウン電圧)と呼びます
ダイオードのデータシート(規格表)を見てみる
半導体には規格を示したデータシートがあります
今はネット上で「PDF形式」ファイルなどとして
メーカーサイトからダウンロード、閲覧できる場合が多いです
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/2022-12-09_13h39_10.png)
(クリックで拡大)
絶対最大定格 (Maximum Ratings)
絶対最大定格は「絶対に超えてはならない」値です
チェックしておきたい項目は・・・
逆電圧(VR)
逆バイアスで印加できる最大電圧です
許容損失(PD)
ダイオードで消費される電力の最大許容値です
許容損失(PD)= 順電流(IF)×順電圧(VF)
で求められます
順方向電流(IF)
順方向電流の最大値です
図のように「平均最大値」や「瞬間的な最大値」として
複数記載されている場合もあります
電気的特性 (Electrical Characteristic)
電気的特性は、「ある条件における他のパラメーター」を示します
このダイオードでは、順方向電圧の測定値として
- IF=10mA時 VF=0.8V
となっています(ちょっと高めですかね)
また、特性図(グラフ)などが記載されている場合もあります
![](https://kumande-craft.com/wp-content/uploads/2022/12/2022-12-09_14h27_35.png)
これは、同じダイオードの特性図ですが
このグラフを読むと
IF=10mA時
VF=0.74V位でしょうか?
グラフは縦軸(電流)が「対数目盛」になっています
このダイオードの「VFとIFの関係」は、
対数(指数)で見れば、とてもリニアなことが判ります
また、他の値のときの関係も
IF=1mA時は・・・VF0.6V位
・・・と、大体の値がわかって便利です
まとめ
ダイオードとは
- 電流を「一方向」だけしか流さない半導体です
- シリコンダイオードは「P型半導体」と「N型半導体」を接合した構造です
- この接合を「PN接合」といいます
順バイアスとは
- アノードに(+)、カソードに(-)の電圧をかけることです
- ダイオードは順バイアスすることで、電流が流れます
- シリコンダイオードでは、順方向電圧(VF)は0.6~0.7V位になります
- ダイオードの電流変化に対する「順方向電圧(VF)」の変化はとても小さいです
逆バイアスとは
- 順バイアスとは「逆向きの電圧」をかけることです
- ダイオードは逆バイアス時、ほとんど電流が流れません
- 逆方向電圧を高くしていくと降伏現象を起こし、大電流が流れます
ダイオードなどの半導体では、メーカーが公表しているデータシートをチェックすることは、とても重要です