パーツショップをのぞくと、様々な抵抗器が売られています
同じ抵抗値でも、形状や大きさ、価格など多岐にわたっていて
一体、どう選んで使うのか、悩みますよね
今回は、電子工作でよく使われる抵抗器の「種類と特徴」について、話したいと思います
抵抗の種類
抵抗には、抵抗体の材質や構造によって、いろいろな種類があります
それぞれ、用途や特徴がありますが、ここでは電子工作によく使われるもの、リード品に限って書きたいと思います
(チップ抵抗や、薄膜抵抗などは、あまり電子工作向きではないですね)
炭素を抵抗体として使ったもの
抵抗体の主原料に炭素を使った抵抗器です
炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)
一般的によく使われる抵抗器で、抵抗値も幅広く、かつ安価で入手性もよいです
「炭素皮膜」に溝を切って、抵抗値を調整したもので、±5%、±10%品をよく見かけます
精密な用途には向かず、高周波特性もそれほど良くないのですが、電子工作に使うには、多くの場合十分な性能だったりします
(高周波特性ですが、ラジオ等の自作では、問題ないと思います)
※一部メーカーでは、オーディオ向けカーボン抵抗も生産されています
ソリッド抵抗
炭素粉末を樹脂などで固化して抵抗体としたものです
高耐圧の抵抗を作れるので、真空管回路などでよく見かけましたが、
精度に難があること、経年劣化に弱いこと、製造コストなどのこともあり、半導体回路が普及した今日では、あまり見かけなくなりました
今日の電子工作では、あまり使うこともないと思いますが、参考に載せました
金属を抵抗体として使ったもの
抵抗体の主原料に、電気抵抗を持つ金属(ニクロムなど)を使ったものです
金属皮膜抵抗(キンピ)
抵抗を持つ「金属皮膜」に溝を切って、抵抗値を調整したもので、精度の良いものが製造できます(1%以下の精度のものも製造されています)
他の特性も、カーボン抵抗に比べ良好ですが、高価になります
※通称「キンピ」と呼ばれます
※一部メーカーでは、オーディオ向け金属皮膜抵抗も生産されています
酸化金属皮膜抵抗(サンキン)
金属の酸化物を抵抗体として使ったものです(通称サンキン)
発熱により発火することがないので、中電力の抵抗器として使われます
コストも同じ電力の抵抗器と比較的して良好ですが、精度では金属皮膜抵抗に劣ります
金属板抵抗
電気抵抗を持つ金属の板を抵抗体としたものです
コイル成分が少なく、主にオーディオ回路の出力段によく使われます
抵抗値は10Ω以下のタイプが生産されています
巻線抵抗
抵抗体としてニクロム線などを巻いたものです
非常に大きな電力の抵抗器(100Wクラスなど)を作ることができますが、構造上コイル成分を持ちます、また、大きな抵抗値は作れません
オーディオ用の品種を製造しているメーカーもあります
表面を耐熱処理したもの(セメント抵抗、ホーロー抵抗、メタルクラッド抵抗)もあります
集合抵抗(抵抗アレイ)
一つのパッケージに、同じ抵抗値の抵抗を複数収めた「集合抵抗」や「抵抗アレイ」と呼ばれる製品もあります
デジタル回路のバス(信号回路)などを、プルアップ(電源と抵抗でつなぐ)する場合などに使われます
写真の集合抵抗は、10KΩが4つ入っています
各抵抗の片側が、丸印リードにつながっています(共通リード、コモンリード)
まとめて電源やGNDへ、抵抗を挟んでつなぐのに便利で、スペースも節約できます
可変抵抗器
抵抗値を変化させられるように作られた抵抗器(可変抵抗器)です
可変抵抗器の種類
可変抵抗器も抵抗体に、カーボンや金属を使ったものなど、種類があります
(電子工作では、カーボンの可変抵抗器を使うことが多く、入手性も良いです)
ツマミを取付けて使う「ボリューム」と、調整用に使われる「半固定抵抗器」があります
- 「回転タイプ」以外に、直線に動く「スライドタイプ」もあります
- 写真左のように「2つボリューム」が、連結されている「2連タイプ」もあります
- 写真右の半固定タイプは、多回転タイプです。より微調整しやすくなっています
カーブ特性
可変抵抗器の「回転角と抵抗値変化の関係」をカーブ特性といいます
可変抵抗器には、カーブ特性が直線ではないタイプがあります
- A型は、人間の聴覚などに合わせたカーブで、音量調整などに適します
- B型は、リニアに変化し、一般的な調整に使われます
- C型は、A型と対称の値をとります(トーンコントロールなどに使われます)
- D型は、A型に近いですがカーブが違います(トーンコントロールなどに使われます)
※入手性:A型、B型は普通に売られていますが、C型、D型はあまり見かけません
電子工作での抵抗選び
さて、色んな種類の抵抗を見てみましたが、目的別ではどう選ぶのか、よくわからない方もいらっしゃると思いますので、選び方について、筆者の独断意見をざっくり述べます
目的別で考える抵抗(かなりざっくり)
誤解を恐れず、かなりざっくり考えると
- 普通の電子工作(カーボン抵抗で十分)
- デジタル回路、マイコン(カーボン系抵抗で大体OK、集合抵抗をつかうことも)
- アナログ回路でオーディオ以外の低周波(カーボン抵抗)
- アナログラジオ(カーボン抵抗で大丈夫な場合が多い)
- フィルター回路や発振回路など、精度を求めるもの(キンピ抵抗などが必要)
- 無線などの高周波、測定回路(キンピ、チップ部品など、部品以外にも実装技術が必要)
- 大きな電流が流れる部分(サンキン抵抗や巻線系でないと「必要なワット数」のものがない場合がある)
- オーディオ回路(好みで選んで下さい、はっきり言って沼です)
私の場合、電子工作や実験では、カーボン抵抗が一揃いあると、大体、用が足ります。他の品種は、必要になってから揃えています
定格電力
どんな回路につかうにしても、最初に考えるのは安全です
「定格電力」の範囲(できれば2倍以上の余裕が欲しい)に収まっていなければなりません
パーツショップで抵抗を買い求めると、多くの場合1/4Wや1/2Wが多いと思いますが
特に、回路の終わりの方(電力増幅段やモーターなどのドライブ段)や、電源などに使用する場合は注意が必要です
電力消費の大きな抵抗は、カーボン抵抗やキンピ抵抗ではなく、サンキン抵抗や巻線系抵抗を検討します
(巻線系でも無誘導巻きで、コイル成分が少ないものがあります、オーディオアンプの終段などで使われます)
オーディオ用について
抵抗体の材質や、リードなど性能以外にも、聴感を重視したオーディオ回路向け製品がありますが、高価で入手性も良くない場合が多いです
ネットや書籍などで「音が良い」と話題の製品もありますが、それが、本当に皆さんの「好みの音」かどうかわかりません、反対の意見を唱える方も、無論います
「音が良い」=「評価した人の好み」 なのです
ただ、こういった情報をもとに、実際に試してみて、好みの音を探すことは、自作の醍醐味であり、特権です
中には、普通の電子部品や、マニアの方々が常識として避ける部品(積セラコンなど)を試して、自分好みの音を見つけられた方もいるようです
電子工作(自作)でも、オーディオ関係は、かなり深い沼ですが、とっかえひっかえ実験している間は、難しい理論抜きに、最高に楽しい時間を過ごせるので、筆者も割と好きです
興味があるなら、いろんな部品を「自分の耳」で確かめてみることを、是非オススメします
ネットや書籍の情報だけでなく、自分だけの「新しい発見」があること請け合いです
まとめ
電子工作で一般的に使われる「抵抗器」をまとめてみました
- カーボン抵抗(安価、入手性が良い)
- 金属皮膜抵抗(やや高価、特性や精度が良い)
- 酸化金属皮膜抵抗(中電力用でコストが良い)
- 巻線抵抗(大電力用、コイル成分を持つ)
- セメント、ホーロー、メタルクラッドは巻線抵抗の仲間
- オーディオ用もあるが高価で、入手性も難あり
抵抗値を変化させられる可変抵抗器
- ボリューム型と半固定型がある
- 二連タイプや、ミキサー型のスライドタイプもある
- A型カーブは、オーディオボリュームなどに使う
- B型カーブは、一般的な調整に使う
ここには書きませんでしたが、他にもいろいろな形状(チップ型など)や、特殊用途に使う抵抗があります
※オーディオ関係は、沼地です
興味があれば、調べてみると面白いと思いますよ