電子回路のパーツ「トランジスター」
基本的な半導体ですが、いざ勉強しようと思うと、実はなかなか難解です
「いつかは攻略してやろう」と思いつつも、専門書を広げて、数式が並んでいるのを見ると・・・「うゎ!」・・・ついつい飛ばし読みで、あと回し
そうなんですよ、トランジスター回路は基本ながら、なかなか手ごわい
今回は、トランジスターについて、自分の復習も兼ねて書いてみたいと思います
「名前は知っているけど、トランジスターって何?」という初心者の方でも
解りやすいように、図などを多く使いました
トランジスターとは、どんな部品?
誤解を恐れずに、一言で言うなら
トランジスターは
電源の「電圧・電流」を使って
小さな信号を、大きな信号に変換(増幅)
することのできる素子です
トランジスターの構造
一般的なシリコントランジスターは
シリコンの「P型半導体」と「N型半導体」を交互に接合した構造です
トランジスターの三層構造は「PNP」か「NPN」の二種類になります
それぞれの層には電極があり、それぞれ
- コレクタ (C)
- ベース (B)
- エミッタ (E)
という名前がついています
※中間に挟まれた層は必ず「ベース」になります
トランジスターの型番
日本メーカーのトランジスター(または、セカンドソース品)は
次のような法則で、名前が付けられています(○は数字の番号)
- 2SA○○○・・・(PNP型・高周波用)
- 2SB○○○・・・(PNP型・低周波用)
- 2SC○○○・・・(NPN型・高周波用)
- 2SD○○○・・・(NPN型・低周波用)
例:2SC1815・・・NPN型・高周波用
近年では違う命名もあります
例:東芝製:TTA008(PNP型・高周波用)など
海外製トランジスターでは、型番の法則は全く違います
例:2N3906(NPN型)/2N3906(PNP型)
BC547(NPN型)/BC557(PNP型)
※型番からはどちらか(PNP型/NPN型)わからないですね
トランジスターには、PN接合が2つある
トランジスターの構造をよく見てみると
PN接合(ダイオード)が2つあることがわかります
- ベース/コレクタ間(コレクタ側PN接合)
- ベース/エミッタ間(エミッタ側PN接合)
シリコン半導体や、PN接合、ダイオードの順バイアスについては、コチラで書いています
トランジスターに電流を流す
トランジスターが持つ「2つのダイオード」を、単純にダイオードとして使う
これでも、電流は流れますが・・・
このような使い方は、まずありません
トランジスターは、増幅やスイッチとして使われる場合
コレクタ側PN接合 = 逆バイアス
エミッタ側PN接合 = 順バイアス
になるように電源をつなぎます
例えば、この回路のように電源と接続します
すると、ベース電流(IB)と、
ベース電流(IB)より、はるかに大きなコレクタ電流(IC)が流れます
ベース、コレクタを流れた電流は、合流してエミッタ電流(IE)となります
つまり・・・
IE =IB+IC
そして、最も大きな特徴は・・・
IBを増やせばICも増加し、IBを減らすとICも減少します
本当にそうなるのか、よく使われる2SC1815で実測しました
電圧は12Vです、ベース電流は可変抵抗器で分圧しています
実測結果はこのようになりました
確かに「IBが増加」すると「ICも増加」しています
hFE(直流電流増幅率)
IBとICの関係は
IC = hFExIB
で表せます
「hFE」は「直流電流増幅率」といいます
gm(相互コンダクタンス)
NPN型トランジスターのIBは、ベースからエミッタに向かって流れます
これは、ベース・エミッタ間のダイオードに電流が流れるからです
すると、ベース・エミッタ間電圧(Vbe)も、ごくわずかですが変化します
もう一度、実測データを見てみましょう
確かにICの変化で、微量ですがVbeも変化しています
VbeとICの関係は
相互コンダクタンス(gm)といいます
gm= ⊿IC/⊿Vbe
で表します。単位はS(ジーメンス)です
トランジスターのgmは
少電流時(~10mA程度)次の式で計算できます
gm(S)=40・IC(290K)
※一般に常温は300Kですが、値が半端です、gm=38.7・IC(300K)
私が学んだ書籍でも「gm=40・IC」としていて、理解し易いかったので
コチラの値を使っていきます
※トランジスターは、品種によらず、少電流時のgmはこの式で計算できます
※ICが大きくなると、gmは計算値より小さくなります
トランジスターの「増幅作用」を実験してみる
それでは、実際に「増幅作用」を実験で「体感」しましょう
今回使ったLEDは高輝度タイプです
旧タイプのLEDだと、ほんのり点灯といった場合もあります
トランジスターは、できれば(BL)ランクのものが良いです
電源は5Vを使いました
まず、LEDに1MΩという高抵抗をつなぎます
5Vの電源につないでも、当然ですが点灯しません
光ったとしても、うっすらです
これは、LEDの電流が少なすぎるからですね
トランジスターを使って電流を増幅
今度はトランジスターを使ってみます
このように、ベースに1MΩをつなぎ
トランジスターで電流を増幅してみます
LEDはコレクタ側につなぎます
(電流が流れすぎないように、LEDには1KΩを入れておきます)
使用したトランジスターは、2SC1815です
入手可能ならBLランクのものが良いです
2SC1815は、ケースの型番が読める側から見て
左から
「E:エミッタ」
「C:コレクタ」
「B:ベース」
です、通称ECB(エクボ)配列なんて呼ぶ方もいます
それでは、ブレッドボードに組んでみます
今度は、明るく点灯しました
応用:タッチしてLEDを光らせる
ベースの抵抗に代わり、電極を付けました
人間の指も電気を通しますので、
このように、電極間にタッチすると・・・
なんと!LEDが点灯します
実験としては、面白いですね
ただ、実用的なタッチセンサーとして使うには、
この回路は問題があります
タッチする電極が金属などでショートすると
トランジスターのベースが破損します
何らかの保護(抵抗を入れるなど)が必要です
もっと増幅度をあげるには
さらに、増幅度を上げる方法もあります
「ダーリントン接続」といいます
このようにトランジスターを接続すると
トータルのhFEは、
(Q1のhFE)x(Q2のhFE)
になります
仮にhFEが、Q1=100、Q2=100だとしたら
トータルのhFEは(100x100=10000)にも達します
BLランクの最大値がhFE700程度ですから、
hFE100のトランジスター2つで、その10倍以上になるわけですね
ダーリントン接続にすると、
タッチセンサーの電極と、ベースの間に1MΩを入れても
全く問題ありません
これなら、センサー部分の電極が
金属などでショートしても大丈夫です
まとめ
トランジスターは
- 構造によってNPN型、PNP型があります
- 小さなベース電流で、大きなコレクタ電流をコントロールする素子です
- IC=IBxhFE
- IBとICの関係は直線的です
- また、小さなVbe変化で、大きなコレクタ電流をコントロールするとも言えます
- gm=⊿IC/⊿Vbe =40xIC(gmはICに依存して変化する)
- VbeとICの関係は指数的です
トランジスターは増幅やスイッチとして使う場合
コレクタ・ベース間を逆バイアス
エミッタ・ベース間を順バイアス
で使います
通常、エミッタ・ベース間電圧「Vbe」は0.6V~0.7V位です
ダーリントン接続などを用いると、hFEを大幅に増加できます