電子部品と回路

オペアンプの増幅回路と、交換について考える

オペアンプ増幅回路を簡単に説明します、また種類やオペアンプ交換についても最低限知っておきたいことを、私に経験からまとめました

現在では、アナログ回路の多くで「オペアンプ」が使われています

そのため、「オペアンプ」の使い方、種類などを学ぶことは、エンジニアならず「電子工作」でも必須と言えるでしょう

オペアンプICとは?

オペアンプは、ゲイン(増幅度)がとても大きな「増幅回路」をICにしたものです

早い話・・・高ゲイン、高性能な「アナログアンプ」ICです

オペアンプを使う利点

  • 2つの抵抗(Rs,Rf)によって「ゲイン」を決められる
  • 増幅回路の難しい部分を既に開発、テスト済み
  • 設計に重要なポイントに集中できる
  • 「プロフェッショナル」が設計した、高クォリティ回路を手軽に使える
  • IC化によって増幅回路の集積率が上がる
  • 量産ICならば、コストパフォマンスは高い
  • など・・・

オペアンプの用途

オペアンプの代表的な使い方は

  • 反転増幅回路
  • 非反転増幅回路
  • 差動増幅回路
  • コンパレーター(比較器)

です

反転増幅回路、非反転増幅回路の動作は下記で詳しく解説します

差動増幅回路は、「バランス入力」を持った増幅回路です

コンパレーターは、電圧どうしの「比較回路」です(A/Dコンバータなどで使われます)

オペアンプの基本

それでは、オペアンプの基本的な「動作」を見ていきましょう

このブログでは増幅回路の動作のイメージについて解説します

回路図を見て、どのように動作しているか「参考」になれば幸いです

※簡単な低周波回路などでは、十分な場合も多いです

オフセット、具体的な位相補償など「高度なトピック」については

専門書に譲ることにします

オペアンプは「入力2つ、出力1つ」

オペアンプは2つの入力端子

  • 反転入力 (-)
  • 非反転入力(+)

を持っています、

また「出力は一つ」だけです

それぞれの入力がどのように動作しているか、見ていきましょう

反転入力に入力してみる

反転入力端子に0.01Vの電圧をかけると

  • 反転した(逆相)出力が得られる
  • ほぼ、いっぱいまで振れている=ゲインがとても大きい

オペアンプは「ゲインがとても大きく」、出力可能な電圧いっぱい振れることが判ります

(一部の品種を除き「最大出力電圧」は、電源電圧より数V低くなります)

非反転入力に、入力してみると

今度は非反転入力端子に0.01Vの電圧をかけてみます

  • 同じ波形の(同相)出力が得られる
  • 出力は、いっぱいまで振れている

非反転入力も、波形が同相で「ゲインが大きい」ことが判ります

バーチュアル・ショート

知っておきたい「オペアンプの重要な性質」として、バーチャル・ショートがあります

バーチャル・ショート

オペアンプが正常に動作している時

非反転入力(+)と反転入力(ー)は同電位

になります

※逆に言えば「非反転入力と反転入力」間の電圧は「0V」になります

※日本語で「仮想接地」という表現が使われる場合がありますが、

非反転入力と反転入力が「GNDに接地」しているわけではありませんから

あまり適切な表現ではないですね・・・

オペアンプを使った「反転増幅回路」

反転増幅回路の特徴

反転増幅回路のゲイン

Av= -(Rf/Rs)

  • 入力と反対の極性(逆相)出力が得られる
  • 入力インピーダンスを低くできる
  • 電流/電圧変換回路として使える
  • 信号源のインピーダンスが低ければ、高S/Nが得やすい
  • (非反転増幅回路より)設計難易度が低い
  • など・・・

反転増幅回路は、オペアンプ回路の入門としては、最適かもしれません

「反転増幅回路」の動作を見る

「反転増幅回路」動作を順を追って見ていきましょう

①入力に(+0.1V)電圧が印加される

A点にプラスの電圧がかかり、出力はマイナス側に振れます

②バーチャル・ショートでA=B

出力が止まるポイントは電圧が(A=B)となったときです

反転増幅回路では「B点=0V」(GND)ですから

A点=B点=0V

この電圧で「バーチャル・ショート」が成立し、出力下降が止まります

③Rsに0.1mAの電流(Is)が流れる

入力=0.1V、A点=0V、Rs=1KΩですから

Rsに0.1mAの電流=Isが流れます

④Isは、ほぼ全てRfを流れる電流Ifとなる

オペアンプの入力抵抗は非常に高く、Isは「ほぼ全て」Rfを流れます

Is=Ifとなるまで「出力がマイナス」に振れます

つまり、オペアンプは、

非反転入力=反転入力

となるまで、出力がスイングするわけです

※入力端子から電圧が発生しているわけではありません

⑤IsxRfの逆相電圧が出力

10KΩで0.1mA流れるには

10KΩx0.1mA = 1V(逆相)

これは入力電圧を(Rf/Rs)倍した値と同じです

反転増幅回路の「入力インピーダンス」

入力インピーダンスは、A点が0V(GND)ですから、

Rsの値になります

オペアンプを使った「非反転増幅回路」

非反転増幅回路の特徴

非反転増幅回路のゲイン

Av= 1+(Rf/Rs)

非反転増幅回路の特徴

  • 入力と同じ極性(同相)出力が得られる
  • 入力インピーダンスを高くできる
  • など・・・

非反転増幅回路は、反転増幅回路に比べよく使われます

まさに、オペアンプ増幅回路の「スタンダード」と言えるでしょう

「非反転増幅回路」の動作を見る

今度は「非反転増幅回路」動作を順を追って見ていきましょう

①入力に(+0.1V)電圧が印加される

B点にプラスの電圧がかかり、出力はプラス側に振れます

②バーチャル・ショートでA=B

出力のスイングが止まるポイントは、電圧が(A=B)となったときです

非反転増幅回路では「B点=0.1V」(入力電圧)ですから

A点=B点=0.1V

この電圧で「バーチャル・ショート」が成立し、出力上昇が止まります

③Rsに0.1mAの電流(Is)が流れる

「バーチャル・ショート」が成立すると

A点=0.1V、Rs=1KΩ、RsはGNDに接続されていますから

Rsに0.1mAの電流=Isが流れます

④Isは、Rfを流れる電流Ifと同じ

オペアンプの入力抵抗は非常に高く、Isは「ほぼ全て」Rfを流れます(If)

「If=Is」なら「RsとRf」は

「出力(Vo)とGND」に直列接続された抵抗とみなせます

⑤1+(Rf/Rs)の同相電圧が出力

「バーチャル・ショート」が成立するには

A点=(Rs/(Rs+Rf))xVo=0.1V

A点の電圧は、直列抵抗の分圧比で計算できます

この式を変形すると、出力電圧が求まります

Vo=((Rs+Rf)/Rs))x0.1V

つまり、出力電圧は

Vo=((1KΩ+10KΩ)/1KΩ)x0.1V

=1.1V(同相)

これは入力電圧を1+(Rf/Rs)倍した値と同じです

非反転増幅回路の「入力インピーダンス」

オペアンプの入力インピーダンスそのものです

非常に高くなります

「オペアンプ」を選ぶとき、知っておきたいこと

いろいろなオペアンプが開発されていますが

実際に「オペアンプを使う、選ぶ」際に参考になる特徴をまとめました

回路数

1パッケージに入っている回路数です

写真は左から

1回路入(TL081)・2回路(TL072)・4回路(TL074)です

※TL071という品種もあります、手持ちの関係で写真はTL081ですが・・・

1回路入りと2回路入は、同じ8ピンICの場合が多いです

パッケージ入り数で型番が違っても、回路の中身は同じ品種もあります

例えば、TL071、TL072、TL074は基本同じオペアンプです

違いはというと・・・

  • 1回路タイプ=オフセット調整ピンがある
  • 2回路タイプ=オペアンプ回路のみ(位相補償は内蔵されている)
  • 4回路タイプ=ICのピン数が増え、4回路(位相補償は内蔵されている)

多くの場合、1回路入では「位相補償やオフセット」の拡張ピンを持っています

2回路以上では、オペアンプ回路だけといった品種が多い

1回路入は、より性能を追求した品種に多いパッケージです

2回路、4回路は位相補償などは内蔵されていて、汎用品に多いパッケージです

半導体タイプ

オペアンプを構成する半導体の種類です、それぞれに特徴があります

バイポーラ

トランジスタで回路が構成されています、多くのオペアンプがバイポーラ型です

FET型(BiFET)

回路の一部、あるいは全部に「FET(電界効果トランジスタ)」を使ったタイプです

FETは入力抵抗が大きいので、入力段がFET、残りはトランジスタというタイプが主流です

Mos型(BiMos)

「MosFET」を使ったオペアンプです

MosFETは入力電流が極めて少なく、低い電源電圧、省電力分野で使われています

MosFETは静電気に弱いので、保管、取扱には注意が必要です

近年は保護回路が内蔵されていて、気楽に扱えるようになりました

用途別

オペアンプには、設計されたコンセプトがあります

使用目的に合った用途(コンセプト)のオペアンプを選ぶことも、回路設計の一部です

汎用

いろいろな用途に使える万能型です

多くが補償素子内蔵で、1倍まで使えるタイプが多いです

半導体は年々、性能が向上しており、「汎用オペアンプ」といえど侮れません

価格、入手性にも優れています

オーディオ向き

オーディオ回路によく使われる品種です

  • 低雑音
  • 専用バッファ(アンプバッファなど)
  • オーディオ用に開発された品種

といった特徴の品種が主流ですが、どちらかというと「数値性能より聴感重視」品種です

「オーディオ用」に開発された品種は、実際に「試聴」重ねて設計されています

精密型

オフセット(入力誤差)が小さく、ゲインが大きい品種です

オペアンプの元は「アナログ計算機」ですから、正当な進化タイプと言えるかもしれません

高速型

より立上り、立下がりスピードを追求した品種です

低消費電力・低電圧動作型

低電力や低電圧で動作させられるオペアンプも開発されています

中には、±1Vから動作できる品種もあります

その他にも「用途特化」したオペアンプが製造されています

オペアンプの交換

キットや市販品などで「オペアンプを交換したい」という場合もありますね

私も、それが楽しみで対応製品を購入したりした記憶があります

そんな場合、最低限「知っておきたい」ことです

  • 指定品以外は動作非保証(あくまでも、自己責任)
  • 使用電圧、電流、は「同じか上位互換品」を選ぶ
  • 回路数、ピンアサインは同じものが必要
  • 回路が発振する場合がある
  • オペアンプを取付、取外しの時失敗しないために

指定品以外は動作非保証

これは、言うまでもないのですが、「改造は自己責任」です

製品の場合はオペアンプを交換した時点で「保証対象外」になります

(これは、オペアンプ交換を「売り」にした製品でさえもです)

使用電圧、電流は「同じか上位互換品」を選ぶ

オペアンプの「最大電圧、最大電流」は、純正品と「同じかそれ以上」の品種を選びます

測定などで「オペアンプの電源電圧」がわかれば、条件を満たしているオペアンプで問題ない場合もあります

あくまでも、絶対ではありません

(実際の経験ですが、オペアンプを上位互換品に交換した時、増幅回路自体は問題なかったのですが、電源の発熱量が増え、電源が故障したことがあります)

回路数、ピンアサインは同じものが必要

交換するオペアンプは、純正品と同じ「回路数、ピンアサイン」である必要があります

形状やPIN数が違う場合は無論ですが

よく間違ってしまう例として、

1回路入りと、2回路入りは、同じ形状のDIP型8PINですが

無条件での交換はできません

写真左は1回路入(LT1128)、右は2回路入(8820)です

同じ形のICですが、ピンアサインが違い互換はありません

(NE5532をOPA627やLT1028に交換したい場合なども同様です)

どうしても交換したい場合には、変換基板を使うなど工夫がいります

回路が発振する場合がある

オペアンプ増幅回路や交換で、よく悩まされるのが「発振」です

回路を設計する場合、オペアンプでは発振防止のため、コンデンサ(位相補償素子)が内蔵、あるいは「外付け」で指定されています、データシートを確認しましょう

交換の場合、回路は純正品で設計されています(市販品では無論、実験で検証もしています)、オペアンプ交換では「発振のリスク」があると考えて下さい

どうしても交換したい(私もそうですが)場合、次のことは知っておいて損はないです

  • オープンループゲインの高い品種ほど、発振しやすい
  • 使用ゲイン「下限」がある品種がある

※オープンループゲインの高い品種ほど、発振しやすい

具体的にはNJM4558やNE5532を、LME49720などに交換すると、発振する場合があります(発振といっても、連続で起らない場合もあります)

オープンループゲインが

  • 4558,5532では100dB位です
  • LME49720は140dB位あります

dB換算ではたった40dBですが、100dB=10万倍、140dB=1000万倍です

実に100倍もの差があるのです、負帰還が大量にかかることから、発振する場合があります

オペアンプの使用可能な下限ゲイン

一部品種では使用ゲインの「下限」がある場合があります

つまり・・・品種によっては「ゲイン1倍」まで使えないものがあるわけです

「発振」はゲインが下がるほど発生しやすく、1倍(ユニティゲイン)が最も厳しくなります

回路が同じで、内蔵補償素子が違う品種が用意されている場合もあります

LT1028/LT1128 LT1037/LT1007

例えば・・・

LT1028はゲイン下限5倍まで、LT1128は1倍までOKです

LT1037/LT1007も同じです

他には、オーディオ回路でよく使われる

NE5534は1回路入、ゲイン3倍以下では「外付け補償素子」が必要です

NE5532は2回路入、1倍までの補償素子内蔵です

位相補償は、オペアンプ単体で補償されています

回路に組み込んだ場合には、追加で「補償素子」が必要な場合もあります

スルーレート(出力の立上、立下スピード)は、位相補償コンデンサが関係しています

高性能オペアンプを選ぶ・使う場合は、注意が必要です

(スルーレートは「ゲイン1倍」時が、最も値が悪くなる)

※このような情報は「データシート」に記載されています

オペアンプを取付、取外で失敗しないために

回路とは直接無関係ですが、オペアンプを抜いたり、はめたりするときに

私の体験からですが・・・特に慣れないと、わりとハマってしまう失敗ではないかと

オペアンプ「取外し時」の失敗

オペアンプを外す時、ドライバーなどで「こじる」と、必ずと言っていいくらい、ICのPINが曲がってしまいます

また、浮いてきたオペアンプを無理やり手で引っこ抜くと、ICのPINが指などに刺さり、痛い思いをする羽目になります

IC引抜き器(エクストラクター)などを準備しておくことを強くオススメします

価格自体、さほどする工具でもありません、高価なオペアンプのPINが曲がったりすると、ホントに凹みます、備えあれば憂いなしです

オペアンプ「取付時」の失敗

慣れてくれば、引抜きよりは失敗は少ないのですが

  • PIN幅をソケット幅に揃える必要がある
  • 挿入時にコツがいること

など、難しいと感じる方はいると思います

そこで、IC挿入器(インサーター)を揃えるのも一つの方法です

とっかえひっかえ「楽しむ」派のために

大したことではありませんが、オペアンプを丸ピンソケットにはめて

丸ピンソケットごと交換する方法があります

確かに、直挿しのほうが「接触や高さ」など有利ですが

  • 交換しやすい(丸ピンソケットを脱着する方が容易)
  • オペアンプのPINを損傷しにくい

といった利点の方が大きいかと思います

抜き差しは、ラジペンで簡単にできます、丸ピンソケットのPINが曲がっても、ソケットを交換すればOKです

まとめ

オペアンプは、ゲイン(増幅度)がとても大きな「増幅回路」をICにしたものです

現在では、アナログ回路の多くで「オペアンプ」が使われています

オペアンプは2つの入力端子

  • 反転入力 (-)
  • 非反転入力(+)

を持っています、

オペアンプの「出力は一つ」です

「オペアンプの重要な性質」として、バーチャル・ショートがあります

正常動作時、オペアンプの

「反転入力端子」と「非反転入力端子」は、同電位になります

反転増幅回路のゲイン

Av= -(Rf/Rs)

非反転増幅回路のゲイン

Av= 1+(Rf/Rs)

オペアンプのバリエーションは

  • パッケージ内の回路数
  • 構成半導体(バイポーラ、FET、MOSFET)
  • 設計されたコンセプト

などにより、多岐にわたっています

オペアンプ交換は、リスクがあります

  • 市販製品の場合は「改造扱い」とされ保証外
  • 回路の発振、損傷
  • 交換時の物理的損傷