突然ですが、音楽はお好きですか
私の場合「音楽なしでは生きられない!」とまでは言いませんが
気がつくとプライベートの時間は、何かしら音楽が鳴っています
ただ、集合住宅なので、スピーカーをガンガン鳴らすわけにもいかず
「ヘッドフォン」のお世話になることが多いのです
そこで、今回はスピーカーにアンプがあるように、ヘッドホンにも
「ヘッドホン専用のアンプを作りたい」
というわけです
ヘッドホンアンプとは・・・
早い話、「ヘッドホン版のステレオアンプ」です
CDやパソコンなどの機器から、スピーカー、ヘッドホンを鳴らすには、
それらを駆動する機器(回路)が必要です
その機器(回路)が「アンプ」というわけですね
ヘッドホンアンプは、「ステレオアンプ」のヘッドホンバージョンってわけです
しかし、ヘッドホンはスピーカーより、はるかに小さな電力で駆動できます
そのため、CDやパソコンなどの機器類に付いている場合も多々あります
「ヘッドホンジャック」というやつですね
独立機器としての「ヘッドホンアンプ」は、実は少数派です
「機器に付いてるなら、何でわざわざヘッドホンアンプが必要なの」
という疑問は、ごもっともなのですが
ヘッドホンのヘビーユーザーは、気に入ったヘッドホンを日頃使うわけで
できれば、機器に付いてるヘッドホンジャックではなく、
コストを掛けた質の良い「専用アンプ」が欲しいわけです
最近は、「ワイヤレス」も良い製品が多数あるようですが、
「ヘッドホンには線がついてないとね!」
何故に「自作」で「ヘッドホンアンプ」なのか・・・
自由度が高い
自作ならではの良さは、自分好みに外観や部品をいじれるわけです
「6.3mmの太いジャックだけでなく、3.5mmの細いジャックも付けたい」とかできるわけですね(今回の回路では、同時使用はできないのですが・・・)
ボリュームやジャック類、ケース、使い勝手に影響ある部品など
好みのものを選べるのは、大きなアドバンテージですね
また、部品や回路構成を検討して、「自分好みの音」を探すなんて言うのも出来ますね
正直、採算なんて言葉は趣味の分野にありませんよね
電子工作の入門として
それほど凝った回路にしない限り、電子工作の初心者でもOKです
ヘッドホンアンプの回路は、低周波回路の基本です
複雑なものでなければ、回路を学ぶ教材としても良いですね
何より、はんだ付け、ケース加工といった「工作技術」を学ぶのには部品も少なく最適です
完成させる喜びを味わえる
こういったDIYモノは、まさに「この一語に尽きる」かもしれません
また、同じ回路図で制作したとしても、全く同じものは世界に2つ無いです
まさに「唯一無二」です
これは、市販品にはない特権です
本機のコンセプト
余談はさておき、本題にもどりましょう
制作に先立ちどのような「ヘッドホンアンプ」にするか決めましょう
本機のコンセプトとしては、次のようなところでしょうか
- なるべく簡単な回路
- 据置ケースに入れる
- ハイエンド狙いはしないが、それなりの性能は欲しい
- ジャックなども、使い勝手の良いものを選びたい
- 自分好みな音作り(改造)も視野に入れる
といったところでしょうか・・・
自作は成功、完成が大切です
だれでも作れる「シンプルな回路構成」が良いですね
せっかく作るのですから、毎日使う「実用性の高い」ものにしたいですし、
ブレッドボードに仮組みして
試聴しながら、パーツをじっくりイジて、本組(基板にはんだ付け)というのも
自作ならではの楽しさでしょう
回路図と仕様
コンセプトを技術的に落し込んだものが仕様です
本機の仕様として
- オペアンプ(4556A)とバッファ(LT1010)を使う
- 反転増幅回路 ゲイン10倍(20dB)
- 正負12V電源を、DCアダプタから作る
- 出力にコンデンサーを付ける
- ポップノイズ対策で、リレーを使う
- THD(歪率)は、負荷ありで0.1%以下
としてみました
回路図の項目以降は、仕様の能書です
わからない、興味ない方は読み飛ばしてください
回路図
本機の回路図です
紙の上やシミュレーターだけでなく、ブレッドボードを使って色々やってみた結果、
この回路に落ち着きました
オペアンプ(4556A)とバッファ(LT1010)を使う
今回のヘッドフォンアンプは、ICを使います
オペアンプ4556A + バッファLT1010
としました
「部品が少なく、性能もそこそこ欲しい」となると、トランジスターなど個別部品より、ICを使ったほうが良いかと
(ディスクリートのヘッドホンアンプは、また今度ということで・・・)
回路構成は、ステレオアンプの基本構成(電圧増幅段 + 電力増幅段)と同じですね
電圧増幅段は、オペアンプ4556Aです
安価で入手性もよく、音も割と好みなので採用しました
2回路入ですので、1つのICでLR両チャンネルの増幅が可能です
オペアンプには
- 5532(NJM5532,NE5532)
- 4558(NJM4558)
- 072(NJM072D,TL072)
なども使えます
電力増幅段は、LT1010を使いました
LT1010は、±150mAまで電流を増やせるバッファICです
秋月電子さんで、扱っていること(入手性・価格)
データシート上に「ハイオーディオ」の記述があったので、使ってみました
LT1010は1回路入なので、LRチャンネル分(2つ)必要です
それでもトランジスターなどでバッファを組むことを考えれば、部品数が少なく済みます
※ここで言う「バッファ」とは、電流を増やす回路です
- 電圧増幅度は約1倍
- 主に電流を増幅する
オペアンプの出力電流をふやす回路ですね
(電流増幅ですが、一般的には電力増幅とよばれる事が多いです)
同じ電圧でも、抵抗が低くなれば電流が増えます
ヘッドフォン、スピーカー以外にも、モーターや電灯など、多く電流を流す回路にオペアンプを使いたい場合、一般的にはバッファ(電力増幅)が必要です
逆に、必要な電流す能力がないと、仮に動いたとしても、歪や発熱、最悪は故障といった不具合に結びつきます
実際には目的に応じて、LT1010、BUF634のようなバッファ用ICや、
個別部品(トランジスタ、MOS-FET)などが使われます
オーディオ回路なら、LME49600という「ヘッドホンアンプに特化」したバッファICもありますね
反転増幅回路 ゲイン10倍(20dB)
多くの場合、アンプでは非反転増幅回路が使われますが、
基本に立ち戻って「反転増幅回路」で組んでみました
(反転増幅回路は非反転増幅回路より、S/Nが良いと言われています)
ゲインは安定を考えて、高めの10倍(20dB)です
本音を言うと当初4.5倍(13dB)くらいにしたかったのですが
4.5倍だとオーバーシュートが割りと出ます
後で「オペアンプを交換して楽しみたい」という思惑もあり
交換時の安定を狙って10倍(20dB)にしました
私の場合、PCオーディオでの使用が主なので、ゲイン10倍でも問題ないのですが
CDプレイヤーなど、出力調整ができない機器で使う場合
入力アッテネーターや、ゲイン自体をもう少し下げるなどの対策が必要かもしれません
あと、懸念があるとすれば、反転増幅回路は、非反転増幅回路に比べ
「入力インピーダンスが低くなりがち」です
一応、手持ち機器のでいくつか試しましたが、今のところ問題ないようです
(真空管を使ったプリなど、数10KΩ以上の入力インピーダンスを想定した機器では、問題があるかもしれません)
正負12V電源を、DCアダプタから作る
オーディオ機器の電源はものすごく大切です
「音質の半分は電源の音」かもしれません
本機の電源ですが、6w絶縁型DC-DCコンバータ(±12V 250mA)で作っています
MIWI06-24D12
というコンバーターですね
※追記:5Wタイプ「MCWI05-12D12」でもOKです
据置型のヘッドフォンアンプですので、電源もある程度のものを組みたかったのですが
「流石に100Vを引き込むのは、大事になりすぎかなと・・・」
「しかし、仮想グランドはやめたい・・・」
「簡単に正負電源にできないだろうか」と、ない知恵絞った結果
絶縁型のDC-DCコンバーターになりました
聴感的なノイズなど、特に問題ないように思いますので
電源は、これで行こうかと・・・
出力にコンデンサーを付ける
確かに、音質の面から考えれば、無い方が良いのでしょう
しかしながら、
- 誤配線の事故からヘッドフォンを守る
- 音質劣化については、正直、感じなかった(色付けは感じます)
- 前向きに考えれば、味付けの一つ
といった事を配慮して付けることにしました
実は、本機の出力DC漏れは、実測±5mV程度です
ヘッドフォンにかかる直流(DC漏れ)としては問題ない値です
ヘッドホンやスピーカーにかかる直流(DC漏れ)はどの位が限度なんでしょうか?
筆者もわからなかったので、ググってみたところ
スピーカー:許容100mV位(限度は1000mV位)
ヘッドホンはその1/20位までらしいので
ヘッドホン:許容値5mV位(限度50mV)
といったところのようです
実はコンデンサーが無くても、DC漏れに関して、本機は問題ないです
(実測±5mV程度でした)
でも安全優先で・・・
無論、出力コンデンサーがあれば、DCは完全にカットできます
よく言われる出力コンデンサーでの「音質劣化」ですが
私はあまり感じませんでした(私が駄耳かもしれませんが)
まあ、コンデンサーの「音の色付けが好きか嫌いか」なと・・・
コンデンサーがあれば、組立時の誤配線などで、ヘッドホンに直流がモロにかかる事故は防げます
実は、試行錯誤時に、誤配線で100円イヤホン何本か焼きました(泣)
12V近い直流がかかると、イヤホン熱くなるんですよね
- 「やっちまったぁー・・・」
- 「何で、お隣さんの穴に線が入ってるんだよ・・・」
- ??目の錯覚? 思い込み?
- ・・・おいらの確認不足なんだよね・・・
- あとは音の出ない「イヤホンだったもの」が残るだけ・・・
- (でも、本命のヘッドホン焼かなくて良かったよ・・・)
と、ならないように「安全かつ楽しめる音」が見つかれば良いかなと
ポップノイズ対策で、リレーを使う
電源ON/OFF時の「パッ」というノイズ(ポップノイズ)を減らす目的で、ミューティングリレーを入れました
981-2A-24DS-SP7
という24Vのリレーです
一応、オーディオアンプの修理に使えるものらしいので、使って見ました
リレーの駆動回路は、なるべく簡単になるよう組んでみました
今のところ問題く動いていますので、とりあえず良しとしましょう
THD(歪率)は、0.1%以下にしたい
ハイエンド狙いは全くしませんが
音楽が普通に楽しめる「音質の目標」を考えました
結論から言えば、全く問題ありませんでした
簡易測定ではありますが、目標のTHD0.1%以下は達成されているようです
ヘッドホンと同等の負荷(30Ω前後)を1Vrmsでドライブしたとき、0.1%程度を想定していましたが、実測した結果はずっと良好でした
部品表
本機の部品表です
秋月電子さんで一通り揃えました
部品名 | 値 | 数量 | 部品番号 |
フィルムコンデンサ | 100pF | 2 | C1,C2 |
0.1μF | 9 | C6, C7, C25, C26, C27、 C9, C11, C17, C18, | |
電解コンデンサー | 10μF | 2 | C3、C4 |
33μF | 2 | C23, C24, | |
100μF | 2 | C8, C10 | |
220μF | 1 | C12, | |
470μF | 5 | C19, C20、C21, C22, C28, | |
2200μF | 4 | C13, C14, C15, C16, | |
高分子コンデンサー | 56μF | 1 | C5 |
LED | 1 | D1 | |
ダイオード | 1 | D2(小信号用、整流用) | |
オペアンプ | NJM4556A | 1 | U1 |
バッファIC | LT1010CN8 | 2 | IC1, IC2, |
ピンジャック(RCA) | 白、赤 | 各1 | J1、J2 |
電源ジャック | 2.1mm | 1 | J3 |
ステレオジャック | 6.3mm/3.5mm | 1 | J4 |
DC-DCコンバーター | MIWI06-24D12 | 1 | PS1 |
トランジスタ | 2SC1815 | 1 | Q1 |
抵抗器 | 2.2Ω | 2 | R14, R15, |
10Ω | 2 | R16, R17, | |
33Ω | 2 | R18, R19, | |
51Ω | 2 | R12, R13 | |
100Ω | 1 | R23 | |
2.2KΩ | 7 | R1, R2, R5, R6, R7, R8, R24 | |
4.7KΩ | 1 | R9,(LED輝度で調整) | |
10KΩ | 2 | R20, R21 | |
22KΩ | 2 | 10, R11, | |
47KΩ | 1 | R22 | |
ボリウム | 10KΩ 2連 Aカーブ | 1 | RV1(ツマミも必要です) |
スイッチ | 2回路タイプ | 1 | SW1 |
DCアダプタ | 12V/1A | 1 | 2.1mmジャックに合うもの |
リレー | 24V 2回路 | 1 | 981-2A-24DS-SP7 |
- コンデンサーの耐圧は25V以上です
- 高分子コンデンサは、33μFの電解コンデンサーでも代用可
- D1(LED)は、お好みでどうぞ
- D2は、スイッチングダイオード、整流ダイオードなら何でも良いです
- R9(4.7KΩ)はLED輝度で調整してください
- オペアンプは5532・4558・TL072などもOKです
- 他にブレッドボードやユニバーサル基板、配線材、工具などが必要です
- シャーシは、加工が容易な「アルミ製」をオススメします
- テスター(安価なデジタルでも良いので)
- 【必須】安価なステレオイヤホン(100円Shop品で可)
普通のカーボン抵抗、標準品のケミコン、マイラーコンデンサで大丈夫です
ICのピン番号
ICは「①PINマーク」または、パッケージ「切欠き」のある側から左回りに数えます
スイッチ、ジャック類
スイッチは2回路のものを使います
電源とリレーそれぞれを同時にON/OFFするために必要です
入力はピンジャックです
GND側がケースに接地しているタイプを使いました
出力のジャックは3.5mmと6.3mmのステレオタイプです
こちらは、ケースから絶縁できるタイプを使いました
※電源のアダプターは12V1Aタイプを使いました
ケースに取り付けるアダプタージャックは、使用するアダプター規格にあったものを用意しました(2.1mm径)
抵抗、コンデンサーについて詳しく
コンデンサーについては、コチラが詳しいです
抵抗器については、コチラです
回路の組立
まずは、実験及び試作用としてブレッドボードに組みました
部品や配線を簡単に、とっかえひっかえできる「ブレッドボード」
こういう用途には、まさに本領発揮です
しかし最終的には、部品が簡単に外れたり、接触不良があっては困りますので
基板に「はんだ付け」するわけですが
今回は「ブレッド基板」なるものにはんだ付けして、ケースに収めました
「ブレッド基板」は、小型ブレッドボードと同じパターンの基板です
ブレッドボードで作った配線そのまま、はんだ付け出来てしまいます
「これは、優れもの!」 再度、配線図を作る手間が省けます
それこそ、実験したブレッドボードの写真を、スマホで撮っておけばOKです
(まあ、実際はケースや部品の関係もあり、若干変更はでるのですが)
こちらは、秋月電子さんで扱っています
メイン基板
本機のメイン、オペアンプ(4556A)電圧増幅段とバッファIC(LT1010)部分です
組立自体、特に難しいところはありません
電源ラインは外側にそれぞれ+12V,-12V、内側にはGNDを配線しました
(上から+12V、GND GND -12V)
電源への接続は、左側(LT1010のある方)から行います
「ブレッド基板」に実装
(小サイズのブレッドボード2つ分を)
1つ分のに収めました
配線、部品配置はブレッドボードから、若干変わっています
- スペースの関係で、オペアンプ側のパスコン(470μF)を省略しました
- 電源のケミコンは高さの関係で、1000μFを2つにしました
- ボリュームがケースにあるため、配線引出しのピンヘッダーを付けました
(後から気づきましたが、Z素子を入れ忘れてますね・・・実用で問題なかったので良し?)
電源基板とリレー基板
電源基板
試作としてブレッドボードに組んだ電源です
DC-DCコンバーターを使ってアダプター(12V)から、正負12Vを作ります
(クリックで拡大)
このブレッドボードは、片側だけに電源レーンがあるタイプです
(しかも、外側は左右分割できる)
マイナス側を反対側に渡すのに、19レーン中央をつなげてます
(コンバーターは、ICソケットを使って上げ底してます)
この辺は、お使いのブレッドボードで工夫してみてください
参考まで DC-DCコンバーターのピン配置です
スミ欠きのある側が、入出力ともに「マイナス側」です
リレー基板
出力コンデンサーとミューティングリレー回路を実装します
リレー駆動回路部分です(部品がギュウギュウ詰めですね)
反対側の写真も載せておきます
ミューティングリレーは、
- 電源ONから1秒くらいしてON
- 電源OFF時は即OFF
電圧が安定してからON、
電源OFF時はパスコンの電圧が残って間にOFFすることで、「パッツ」というノイズを減らします
(無くても気にならない方は、省略してもOKですかね)
ちなみに、リレー裏面のピン配置です
駆動コイル側は縦に、接点は横に配置されています
「ブレッド基板」に実装
電源基板
- 両側に「電源レーン」があるため、配線を変更しました
- LEDがケース取付なので、ピンヘッダーをつけて引出してあります
リレー基板
- 出力コンデンサーを(1000μF+1μF パラ接続)に増量しました
- 「ニチコンKZの1000μF」と、ストッカーにあった「メタライズPPコンデンサー1μF」
- (ケースに立てて収納できないので、寝かした関係で、コンデンサー周辺は大幅に回路変更しました)
動作確認
部品をブレッドボードなどに組み終えたら、動作確認をします
何回やっても、この瞬間はドキドキしますね
私が行っている確認は
- まず、回路図(あれば配線図)と部品の取付をもう再度チェックする
- 電源を単体でテスト(ON/OFF、出力電圧を測定)
- LT1010の出力電圧(コンデンサーの前)を測る(両Ch実施)
- リレーが正常に動作するか確認する
- ON状態で様子をみる(異臭、IC温度など)
- 100円ショップのイヤホンを接続して、実際に聞いてみる
- オシロスコープ、オシレーターを使って波形を見る
- 歪み率を簡易測定する
- 実際にしばらくリスニングしてみる
といったものでしょうか
※今回はブレッドボード試作時に、全項目実施しました(波形やTHD値)
※はんだ付け組立、ケース組み込み時は、1~6、9の項目を実施しました
1.回路図(配線図)と部品取付けを再度チェック
人は必ずミスを犯すものです
それはビギナーだけでなく、ベテランであっても例外ではありません
必ずもう一度、回路図、配線図と突合せましょう
ホント、面倒くさいですよね
ですが、部品のリードがお隣さんの穴にシレッと入っていたり、極性のある部品が反対向きだったり・・・こんなミスは、日常茶飯事です
電源を投入する前に、配線の再チェックすることを強くオススメします
2.電源を単体でテストする
今回のように電源と信号を扱う基板が分かれている場合
まず、電源だけチェックしておきます
(トラブル発生箇所が絞り込めるように、チェックできるものはやっておきます)
先述の通り、回路図と配線、部品があっているか、まずチェックします
特にやりがちなミスとしては
- ケミコンの極性が逆
- モジュールやダイオード、トランジスタなどが逆
- 半田のつけ忘れや不良
こんなところでしょうか
(笑い話ですが、昔、ヒューズを入れ忘れて「電源が動かない」と焦ったことがあります)
実際に電圧をかけて
- LEDが点灯するか
- 出力電圧は出ているか
を確認します
(電子工作にテスターは必須です、安価なデジタルテスターで良いので用意下さい)
この時、異臭やモジュールに触れて異常がないか観察します
スイッチを切っても、負荷がLEDだけの場合、しばらく点灯するのが正常です
3.LT1010の出力電圧(コンデンサーの前)を測る
電源をメイン基板につないで、電源を入れます
LT1010の出力は、直流数mV位が正常です
(実測5mV前後でした)
±100mV(0.1V)を超える場合、どこかで配線ミス、部品の故障が疑われます
±1Vを超えているなら、間違いなく異常です、すぐに電源を切ってください
(例えば、配線ミスしていると、ここが11.5Vとかになります)
この値が正常値なら、実際に入力と出力に接続して聞いてみてOKです
4.リレーが正常に動作するか確認する
電源SWをON/OFFしてミーティングリレーが動作するか確認します
(24Vの電源を使って単体でテストしてもOKです)
- 電源ON時は、少し経ってから(1秒前後)リレーが「カチッ」とON
- 電源OFF時は、即リレーがOFFになれば正常です
5.ON状態で様子をみる
しばらく、電源ONで様子をみます
この時、異常発振しているとICが加熱して「焼けるような異臭」がしたりします
- 正常ならオペアンプ(4556A)の発熱はほとんど無いです
- LT1010は、そこそこ熱くなります
(しばらく触っていると熱いですが、触った途端に火傷しそうでなければOKです)
6.「100円ショップ」のイヤホンを接続して聞いてみる
ここまでをクリアーできたなら、実際に音を聞いてみます
入力にパソコンなどのライン出力、ヘッドホンジャックにイヤホンをつないぎます
イヤホンは、何かあって「オシャカ」になっても良いものでテストします
私は「100円ショップのイヤホン」を使いました
これで、左右正常に音が鳴れば、めでたしめでたしです
機器が接続されていれば、無音時ノイズは、ほとんど聞こえません
もし「ブー」といったノイズが入る場合
- ボリュームの金属部分がGNDに落としてあるか
- 入力がシールドでない場合、長すぎないか(GNDとツイストしてあるか)
- 部品や配線ミス、接触不良など
を確認してみます
※入力のコンデンサー(10μF)付近に触れると、「ブー」といったノイズが入りますが、これは正常です
7.オシロスコープ、オシレーターを使って波形を見る
オシロスコープをお持ちでしたら、波形を見ておくと安心ですね
- 矩形波(方形波)10KHz
- 10KHz、立ち上がりエッジ拡大
- 矩形波(方形波)100KHz
を載せておきます
100KHzでは、ゆがんで矩形でなくなってきますが、聴感上は問題ありません
8.歪み率を簡易測定する
本機のTHDはフリーソフトを利用した簡易測定ですが、以下の通りでした
周波数(Hz) | THD(%) |
100 | 0.023 |
200 | 0.023 |
500 | 0.023 |
1K | 0.022 |
2K | 0.021 |
5K | 0.035 |
10K | 0.038 |
測定条件
- 30Ωダミーロード(巻線抵抗)
- 出力電圧 1Vrms (2.83Vp-p)
- フリーソフト WaveGene Ver1.5 及び WaveSpectra Ver1.51
- FFTサンプルデータ:131072/窓関数:Flat top
- 入力レベル-10dB前後で測定(自作ATT使用)
- オーディオインターフェイス SoundBlaster Premium HD
(注)サウンドインターフェイスを使用した簡易測定です、参考程度に御覧ください
※この1Vrmsという出力は、実際のヘッドホンでは爆音です
余談ですが、THDが1%近くあっても、聴感上は歪んでいるように聞こえません
実際にしばらくリスニングしてみる
普段使っているヘッドホンで、しばらく音楽を聞いてみるとなお良いですね
電子部品は新品の場合、しばらく電気を流して使ってあげないと、本来の性能がでない場合があります
(例えば、新品時は低音が出にくい、高音がこもる、キツイ音域があるなど、部品の癖があります)
(エージングと言って、アンプ以外にもスピーカーやヘッドホンなども同様です)
ガッツリやる必要はありませんが、しばらく聞いてみて、特に問題を感じなければOKです
シャーシ組込み(全景)
前面より、蓋を外した状態です
背面は、入力PINジャックと、アダプター用コネクタだけです
上の小箱は、市販のDACです
ケースに収まると、立派な見栄えになりますね
(思いっきり、自己満足ですが、本人が満足ならOK)
制作後記
私のところでは、写真の右側にある、USB-DACを組み合わせています
ES9018というチップを使った製品で、解像感はすごく良いのですが、
DAC単体では、低音がちょっと物足りなく、本体の「ヘッドホン端子」の接触もイマイチ良くない・・・「何か、残念クン」だったのですが!
このヘッドホンアンプと組合せると
かなり「良い感じ」です
ヘッドホンアンプを入れることで、低音の量感が増え、重心が下がった感じです
無音部分での静寂感も、向上した気がします
操作面では、6.3mmヘッドホンジャックや、ボリュームなど、
DAC単体では不満だった部分が解消
使っているうちに「これはなかなか」と、すっかり気に入ってしまいました
ブログネタにしている筆者が言うのもなんですが、実は、ちょっと嬉しい誤算でした
金属ケースに収める「本格的な電子工作」は、ホント、久々でしたが
何か、楽しい時間を過ごせました