ヘッドホンアンプ

【ヘッドフォンアンプ 自作】オペアンプ4556AとLT1010で、ヘッドホンアンプを自作する

突然ですが、音楽はお好きですか

私の場合「音楽なしでは生きられない!」とまでは言いませんが

気がつくとプライベートの時間は、何かしら音楽が鳴っています

ただ、集合住宅なので、スピーカーをガンガン鳴らすわけにもいかず

「ヘッドフォン」のお世話になることが多いのです

そこで、今回はスピーカーにアンプがあるように、ヘッドホンにも

「ヘッドホン専用のアンプを作りたい」

というわけです

ヘッドホンアンプとは・・・

早い話、「ヘッドホン版のステレオアンプ」です

(クリック拡大)

CDやパソコンなどの機器から、スピーカー、ヘッドホンを鳴らすには、

それらを駆動する機器(回路)が必要です

その機器(回路)が「アンプ」というわけですね

ヘッドホンアンプは、「ステレオアンプ」のヘッドホンバージョンってわけです

しかし、ヘッドホンはスピーカーより、はるかに小さな電力で駆動できます

そのため、CDやパソコンなどの機器類に付いている場合も多々あります

「ヘッドホンジャック」というやつですね

独立機器としての「ヘッドホンアンプ」は、実は少数派です

「機器に付いてるなら、何でわざわざヘッドホンアンプが必要なの」

という疑問は、ごもっともなのですが

ヘッドホンのヘビーユーザーは、気に入ったヘッドホンを日頃使うわけで

できれば、機器に付いてるヘッドホンジャックではなく、

コストを掛けた質の良い「専用アンプ」が欲しいわけです

最近は、「ワイヤレス」も良い製品が多数あるようですが、

「ヘッドホンには線がついてないとね!」

何故に「自作」で「ヘッドホンアンプ」なのか・・・

(黒いボックスが、今回作成したヘッドホンアンプ)

自由度が高い

自作ならではの良さは、自分好みに外観や部品をいじれるわけです

「6.3mmの太いジャックだけでなく、3.5mmの細いジャックも付けたい」とかできるわけですね(今回の回路では、同時使用はできないのですが・・・)

ボリュームやジャック類、ケース、使い勝手に影響ある部品など

好みのものを選べるのは、大きなアドバンテージですね

また、部品や回路構成を検討して、「自分好みの音」を探すなんて言うのも出来ますね

正直、採算なんて言葉は趣味の分野にありませんよね

電子工作の入門として

それほど凝った回路にしない限り、電子工作の初心者でもOKです

ヘッドホンアンプの回路は、低周波回路の基本です

複雑なものでなければ、回路を学ぶ教材としても良いですね

何より、はんだ付け、ケース加工といった「工作技術」を学ぶのには部品も少なく最適です

完成させる喜びを味わえる

こういったDIYモノは、まさに「この一語に尽きる」かもしれません

また、同じ回路図で制作したとしても、全く同じものは世界に2つ無いです

まさに「唯一無二」です

これは、市販品にはない特権です

本機のコンセプト

余談はさておき、本題にもどりましょう

制作に先立ちどのような「ヘッドホンアンプ」にするか決めましょう

本機のコンセプトとしては、次のようなところでしょうか

  • なるべく簡単な回路
  • 据置ケースに入れる
  • ハイエンド狙いはしないが、それなりの性能は欲しい
  • ジャックなども、使い勝手の良いものを選びたい
  • 自分好みな音作り(改造)も視野に入れる

といったところでしょうか・・・

自作は成功、完成が大切です

だれでも作れる「シンプルな回路構成」が良いですね

せっかく作るのですから、毎日使う「実用性の高い」ものにしたいですし、

ブレッドボードに仮組みして

試聴しながら、パーツをじっくりイジて、本組(基板にはんだ付け)というのも

自作ならではの楽しさでしょう

回路図と仕様

コンセプトを技術的に落し込んだものが仕様です

本機の仕様として

  • オペアンプ(4556A)とバッファ(LT1010)を使う
  • 反転増幅回路 ゲイン10倍(20dB)
  • 正負12V電源を、DCアダプタから作る
  • 出力にコンデンサーを付ける
  • ポップノイズ対策で、リレーを使う
  • THD(歪率)は、負荷ありで0.1%以下

としてみました

回路図の項目以降は、仕様の能書です

わからない、興味ない方は読み飛ばしてください

回路図

本機の回路図です

(クリックで拡大します)

紙の上やシミュレーターだけでなく、ブレッドボードを使って色々やってみた結果、

この回路に落ち着きました

オペアンプ(4556A)とバッファ(LT1010)を使う

今回のヘッドフォンアンプは、ICを使います

オペアンプ4556A + バッファLT1010

としました

「部品が少なく、性能もそこそこ欲しい」となると、トランジスターなど個別部品より、ICを使ったほうが良いかと

(ディスクリートのヘッドホンアンプは、また今度ということで・・・)

回路構成は、ステレオアンプの基本構成(電圧増幅段 + 電力増幅段)と同じですね

電圧増幅段は、オペアンプ4556Aです

安価で入手性もよく、音も割と好みなので採用しました

2回路入ですので、1つのICでLR両チャンネルの増幅が可能です

オペアンプには

  • 5532(NJM5532,NE5532)
  • 4558(NJM4558)
  • 072(NJM072D,TL072)

なども使えます

電力増幅段は、LT1010を使いました

LT1010は、±150mAまで電流を増やせるバッファICです

秋月電子さんで、扱っていること(入手性・価格)

データシート上に「ハイオーディオ」の記述があったので、使ってみました

LT1010は1回路入なので、LRチャンネル分(2つ)必要です

それでもトランジスターなどでバッファを組むことを考えれば、部品数が少なく済みます

※ここで言う「バッファ」とは、電流を増やす回路です

  • 電圧増幅度は約1倍
  • 主に電流を増幅する

オペアンプの出力電流をふやす回路ですね

(電流増幅ですが、一般的には電力増幅とよばれる事が多いです)

同じ電圧でも、抵抗が低くなれば電流が増えます

ヘッドフォン、スピーカー以外にも、モーターや電灯など、多く電流を流す回路にオペアンプを使いたい場合、一般的にはバッファ(電力増幅)が必要です

逆に、必要な電流す能力がないと、仮に動いたとしても、歪や発熱、最悪は故障といった不具合に結びつきます

実際には目的に応じて、LT1010、BUF634のようなバッファ用ICや、

個別部品(トランジスタ、MOS-FET)などが使われます

オーディオ回路なら、LME49600という「ヘッドホンアンプに特化」したバッファICもありますね

反転増幅回路 ゲイン10倍(20dB)

(非反転増幅回路のゲインは、正確には逆相になるため -(Rf/Rs)です)

多くの場合、アンプでは非反転増幅回路が使われますが、

基本に立ち戻って「反転増幅回路」で組んでみました

(反転増幅回路は非反転増幅回路より、S/Nが良いと言われています)

ゲインは安定を考えて、高めの10倍(20dB)です

本音を言うと当初4.5倍(13dB)くらいにしたかったのですが

4.5倍だとオーバーシュートが割りと出ます

後で「オペアンプを交換して楽しみたい」という思惑もあり

交換時の安定を狙って10倍(20dB)にしました

私の場合、PCオーディオでの使用が主なので、ゲイン10倍でも問題ないのですが

CDプレイヤーなど、出力調整ができない機器で使う場合

入力アッテネーターや、ゲイン自体をもう少し下げるなどの対策が必要かもしれません

あと、懸念があるとすれば、反転増幅回路は、非反転増幅回路に比べ

「入力インピーダンスが低くなりがち」です

一応、手持ち機器のでいくつか試しましたが、今のところ問題ないようです

(真空管を使ったプリなど、数10KΩ以上の入力インピーダンスを想定した機器では、問題があるかもしれません)

正負12V電源を、DCアダプタから作る

オーディオ機器の電源はものすごく大切です

「音質の半分は電源の音」かもしれません

(試作でブレッドボードに組んだ電源)

本機の電源ですが、6w絶縁型DC-DCコンバータ(±12V 250mA)で作っています

MIWI06-24D12

というコンバーターですね

※追記:5Wタイプ「MCWI05-12D12」でもOKです

据置型のヘッドフォンアンプですので、電源もある程度のものを組みたかったのですが

「流石に100Vを引き込むのは、大事になりすぎかなと・・・」

「しかし、仮想グランドはやめたい・・・」

「簡単に正負電源にできないだろうか」と、ない知恵絞った結果

絶縁型のDC-DCコンバーターになりました

聴感的なノイズなど、特に問題ないように思いますので

電源は、これで行こうかと・・・

出力にコンデンサーを付ける

確かに、音質の面から考えれば、無い方が良いのでしょう

しかしながら、

  • 誤配線の事故からヘッドフォンを守る
  • 音質劣化については、正直、感じなかった(色付けは感じます)
  • 前向きに考えれば、味付けの一つ

といった事を配慮して付けることにしました

実は、本機の出力DC漏れは、実測±5mV程度です

ヘッドフォンにかかる直流(DC漏れ)としては問題ない値です

ヘッドホンやスピーカーにかかる直流(DC漏れ)はどの位が限度なんでしょうか?

筆者もわからなかったので、ググってみたところ

スピーカー:許容100mV位(限度は1000mV位)

ヘッドホンはその1/20位までらしいので

ヘッドホン:許容値5mV位(限度50mV)

といったところのようです

実はコンデンサーが無くても、DC漏れに関して、本機は問題ないです

(実測±5mV程度でした)

でも安全優先で・・・

無論、出力コンデンサーがあれば、DCは完全にカットできます

よく言われる出力コンデンサーでの「音質劣化」ですが

私はあまり感じませんでした(私が駄耳かもしれませんが)

まあ、コンデンサーの「音の色付けが好きか嫌いか」なと・・・

コンデンサーがあれば、組立時の誤配線などで、ヘッドホンに直流がモロにかかる事故は防げます

実は、試行錯誤時に、誤配線で100円イヤホン何本か焼きました(泣)

12V近い直流がかかると、イヤホン熱くなるんですよね

  • 「やっちまったぁー・・・」
  • 「何で、お隣さんの穴に線が入ってるんだよ・・・」
  • ??目の錯覚? 思い込み?
  • ・・・おいらの確認不足なんだよね・・・
  • あとは音の出ない「イヤホンだったもの」が残るだけ・・・
  • (でも、本命のヘッドホン焼かなくて良かったよ・・・)

と、ならないように「安全かつ楽しめる音」が見つかれば良いかなと

ポップノイズ対策で、リレーを使う

電源ON/OFF時の「パッ」というノイズ(ポップノイズ)を減らす目的で、ミューティングリレーを入れました

981-2A-24DS-SP7 

という24Vのリレーです

一応、オーディオアンプの修理に使えるものらしいので、使って見ました

リレーの駆動回路は、なるべく簡単になるよう組んでみました

今のところ問題く動いていますので、とりあえず良しとしましょう

THD(歪率)は、0.1%以下にしたい

ハイエンド狙いは全くしませんが

音楽が普通に楽しめる「音質の目標」を考えました

結論から言えば、全く問題ありませんでした

簡易測定ではありますが、目標のTHD0.1%以下は達成されているようです

ヘッドホンと同等の負荷(30Ω前後)を1Vrmsでドライブしたとき、0.1%程度を想定していましたが、実測した結果はずっと良好でした

部品表

本機の部品表です

秋月電子さんで一通り揃えました

部品名数量部品番号
フィルムコンデンサ100pF2C1,C2
0.1μF9C6, C7, C25, C26, C27、
C9, C11, C17, C18,
電解コンデンサー10μF2C3、C4
33μF2C23, C24,
100μF2C8, C10
220μF1C12,
470μF5C19, C20、C21, C22, C28,
2200μF4C13, C14, C15, C16,
高分子コンデンサー56μF1C5
LED1D1
ダイオード1D2(小信号用、整流用)
オペアンプNJM4556A1U1
バッファICLT1010CN82IC1, IC2,
ピンジャック(RCA)白、赤各1J1、J2
電源ジャック2.1mm1J3
ステレオジャック6.3mm/3.5mm1J4
DC-DCコンバーターMIWI06-24D121PS1
トランジスタ2SC18151Q1
抵抗器2.2Ω2R14, R15,
10Ω2R16, R17,
33Ω2R18, R19,
51Ω2R12, R13
100Ω1R23
2.2KΩ7R1, R2, R5, R6, R7, R8, R24
4.7KΩ1R9,(LED輝度で調整)
10KΩ2R20, R21
22KΩ210, R11,
47KΩ1R22
ボリウム10KΩ 2連 Aカーブ1RV1(ツマミも必要です)
スイッチ2回路タイプ1SW1
DCアダプタ12V/1A 12.1mmジャックに合うもの
リレー24V 2回路1981-2A-24DS-SP7
  • コンデンサーの耐圧は25V以上です
  • 高分子コンデンサは、33μFの電解コンデンサーでも代用可
  • D1(LED)は、お好みでどうぞ
  • D2は、スイッチングダイオード、整流ダイオードなら何でも良いです
  • R9(4.7KΩ)はLED輝度で調整してください
  • オペアンプは5532・4558・TL072などもOKです
  • 他にブレッドボードやユニバーサル基板、配線材、工具などが必要です
  • シャーシは、加工が容易な「アルミ製」をオススメします
  • テスター(安価なデジタルでも良いので)
  • 【必須】安価なステレオイヤホン(100円Shop品で可)

普通のカーボン抵抗、標準品のケミコン、マイラーコンデンサで大丈夫です

ICのピン番号

ICは「①PINマーク」または、パッケージ「切欠き」のある側から左回りに数えます

スイッチ、ジャック類

スイッチは2回路のものを使います

電源とリレーそれぞれを同時にON/OFFするために必要です

入力はピンジャックです

GND側がケースに接地しているタイプを使いました

出力のジャックは3.5mmと6.3mmのステレオタイプです

こちらは、ケースから絶縁できるタイプを使いました

※電源のアダプターは12V1Aタイプを使いました

ケースに取り付けるアダプタージャックは、使用するアダプター規格にあったものを用意しました(2.1mm径)

抵抗、コンデンサーについて詳しく

コンデンサーについては、コチラが詳しいです

コンデンサーの「種類」と「選び方」 電子工作で、必ずと言っていいほどお世話になる部品が、「コンデンサー」ですね 抵抗器と並んで、この部品がないと電子回路が作れない重...

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抵抗の「種類と特徴」、電子工作での「選び方」 パーツショップをのぞくと、様々な抵抗器が売られています 同じ抵抗値でも、形状や大きさ、価格など多岐にわたっていて 一体、ど...

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回路の組立

まずは、実験及び試作用としてブレッドボードに組みました

部品や配線を簡単に、とっかえひっかえできる「ブレッドボード」

こういう用途には、まさに本領発揮です

しかし最終的には、部品が簡単に外れたり、接触不良があっては困りますので

基板に「はんだ付け」するわけですが

今回は「ブレッド基板」なるものにはんだ付けして、ケースに収めました

ブレッド基板」は、小型ブレッドボードと同じパターンの基板です

ブレッドボードで作った配線そのまま、はんだ付け出来てしまいます

「これは、優れもの!」 再度、配線図を作る手間が省けます

それこそ、実験したブレッドボードの写真を、スマホで撮っておけばOKです

(まあ、実際はケースや部品の関係もあり、若干変更はでるのですが)

こちらは、秋月電子さんで扱っています

メイン基板

本機のメイン、オペアンプ(4556A)電圧増幅段とバッファIC(LT1010)部分です

(クリックで拡大)

組立自体、特に難しいところはありません

電源ラインは外側にそれぞれ+12V,-12V、内側にはGNDを配線しました

(上から+12V、GND GND -12V)

電源への接続は、左側(LT1010のある方)から行います

ボリュームの金属部分(軸やボディー)をGNDへ接地することを忘れると、

「ジー」「ブー」というノイズが乗ります

金属ケースに入れると、普通に接地されますので、ついつい忘れがちです

ヘッドホンアンプ製作記事にあまり書かれていないようですが・・・

割とハマりやすいトラブルではないでしょか

※プラケースなどを使われる場合は、意識して接地したほうが良いでしょう

「ブレッド基板」に実装

(小サイズのブレッドボード2つ分を)

1つ分のに収めました

配線、部品配置はブレッドボードから、若干変わっています

  • スペースの関係で、オペアンプ側のパスコン(470μF)を省略しました
  • 電源のケミコンは高さの関係で、1000μFを2つにしました
  • ボリュームがケースにあるため、配線引出しのピンヘッダーを付けました

(後から気づきましたが、Z素子を入れ忘れてますね・・・実用で問題なかったので良し?)

電源基板とリレー基板

電源基板

試作としてブレッドボードに組んだ電源です

DC-DCコンバーターを使ってアダプター(12V)から、正負12Vを作ります

(クリックで拡大)

このブレッドボードは、片側だけに電源レーンがあるタイプです

(しかも、外側は左右分割できる)

マイナス側を反対側に渡すのに、19レーン中央をつなげてます

(コンバーターは、ICソケットを使って上げ底してます)

この辺は、お使いのブレッドボードで工夫してみてください

(クリックで拡大)

参考まで DC-DCコンバーターのピン配置です

スミ欠きのある側が、入出力ともに「マイナス側」です

リレー基板

出力コンデンサーとミューティングリレー回路を実装します

(クリックで拡大)

リレー駆動回路部分です(部品がギュウギュウ詰めですね)

(クリックで拡大)

反対側の写真も載せておきます

(クリックで拡大)

ミューティングリレーは、

  • 電源ONから1秒くらいしてON
  • 電源OFF時は即OFF

電圧が安定してからON、

電源OFF時はパスコンの電圧が残って間にOFFすることで、「パッツ」というノイズを減らします

(無くても気にならない方は、省略してもOKですかね)

ちなみに、リレー裏面のピン配置です

駆動コイル側は縦に、接点は横に配置されています

「ブレッド基板」に実装

(クリックで拡大)

電源基板

  • 両側に「電源レーン」があるため、配線を変更しました
  • LEDがケース取付なので、ピンヘッダーをつけて引出してあります

リレー基板

  • 出力コンデンサーを(1000μF+1μF パラ接続)に増量しました
  • 「ニチコンKZの1000μF」と、ストッカーにあった「メタライズPPコンデンサー1μF」
  • (ケースに立てて収納できないので、寝かした関係で、コンデンサー周辺は大幅に回路変更しました)

動作確認

部品をブレッドボードなどに組み終えたら、動作確認をします

何回やっても、この瞬間はドキドキしますね

もし、「何かかおかしい」と感じたときは、即電源OFFです

私が行っている確認は

  1. まず、回路図(あれば配線図)と部品の取付をもう再度チェックする
  2. 電源を単体でテスト(ON/OFF、出力電圧を測定)
  3. LT1010の出力電圧(コンデンサーの前)を測る(両Ch実施)
  4. リレーが正常に動作するか確認する
  5. ON状態で様子をみる(異臭、IC温度など)
  6. 100円ショップのイヤホンを接続して、実際に聞いてみる
  7. オシロスコープ、オシレーターを使って波形を見る
  8. 歪み率を簡易測定する
  9. 実際にしばらくリスニングしてみる

といったものでしょうか

※今回はブレッドボード試作時に、全項目実施しました(波形やTHD値)

※はんだ付け組立、ケース組み込み時は、1~6、9の項目を実施しました

1.回路図(配線図)と部品取付けを再度チェック

人は必ずミスを犯すものです

それはビギナーだけでなく、ベテランであっても例外ではありません

必ずもう一度、回路図、配線図と突合せましょう

ホント、面倒くさいですよね

ですが、部品のリードがお隣さんの穴にシレッと入っていたり、極性のある部品が反対向きだったり・・・こんなミスは、日常茶飯事です

電源を投入する前に、配線の再チェックすることを強くオススメします

2.電源を単体でテストする

今回のように電源と信号を扱う基板が分かれている場合

まず、電源だけチェックしておきます

(トラブル発生箇所が絞り込めるように、チェックできるものはやっておきます)

先述の通り、回路図と配線、部品があっているか、まずチェックします

特にやりがちなミスとしては

  • ケミコンの極性が逆
  • モジュールやダイオード、トランジスタなどが逆
  • 半田のつけ忘れや不良

こんなところでしょうか

(笑い話ですが、昔、ヒューズを入れ忘れて「電源が動かない」と焦ったことがあります)

(クリックで拡大)

実際に電圧をかけて

  • LEDが点灯するか
  • 出力電圧は出ているか

を確認します

(電子工作にテスターは必須です、安価なデジタルテスターで良いので用意下さい)

この時、異臭やモジュールに触れて異常がないか観察します

スイッチを切っても、負荷がLEDだけの場合、しばらく点灯するのが正常です

3.LT1010の出力電圧(コンデンサーの前)を測る

電源をメイン基板につないで、電源を入れます

LT1010の出力は、直流数mV位が正常です

(実測5mV前後でした)

(クリックで拡大)

±100mV(0.1V)を超える場合、どこかで配線ミス、部品の故障が疑われます

±1Vを超えているなら、間違いなく異常です、すぐに電源を切ってください

(例えば、配線ミスしていると、ここが11.5Vとかになります)

この値が正常値なら、実際に入力と出力に接続して聞いてみてOKです

4.リレーが正常に動作するか確認する

電源SWをON/OFFしてミーティングリレーが動作するか確認します

(24Vの電源を使って単体でテストしてもOKです)

  • 電源ON時は、少し経ってから(1秒前後)リレーが「カチッ」とON
  • 電源OFF時は、即リレーがOFFになれば正常です

5.ON状態で様子をみる

しばらく、電源ONで様子をみます

この時、異常発振しているとICが加熱して「焼けるような異臭」がしたりします

  • 正常ならオペアンプ(4556A)の発熱はほとんど無いです
  • LT1010は、そこそこ熱くなります

(しばらく触っていると熱いですが、触った途端に火傷しそうでなければOKです)

近年のICやトランジスタは高周波性能がよく、異常発振をオシロスコープで見つけにくい場合が多々あります

ただ、発熱といった形で現れることも珍しく無いので、こんな原始的なチェックですが、しておくにこしたことはないです

6.「100円ショップ」のイヤホンを接続して聞いてみる

ここまでをクリアーできたなら、実際に音を聞いてみます

入力にパソコンなどのライン出力、ヘッドホンジャックにイヤホンをつないぎます

イヤホンは、何かあって「オシャカ」になっても良いものでテストします

私は「100円ショップのイヤホン」を使いました

これで、左右正常に音が鳴れば、めでたしめでたしです

機器が接続されていれば、無音時ノイズは、ほとんど聞こえません

もし「ブー」といったノイズが入る場合

  • ボリュームの金属部分がGNDに落としてあるか
  • 入力がシールドでない場合、長すぎないか(GNDとツイストしてあるか)
  • 部品や配線ミス、接触不良など

を確認してみます

※入力のコンデンサー(10μF)付近に触れると、「ブー」といったノイズが入りますが、これは正常です

7.オシロスコープ、オシレーターを使って波形を見る

オシロスコープをお持ちでしたら、波形を見ておくと安心ですね

  • 矩形波(方形波)10KHz
  • 10KHz、立ち上がりエッジ拡大
  • 矩形波(方形波)100KHz

を載せておきます

4556A 10KHz 矩形波(20μs)
4556A 10KHz 立上り拡大(2μs)
参考 4556A 100KHz (2μs)

100KHzでは、ゆがんで矩形でなくなってきますが、聴感上は問題ありません

8.歪み率を簡易測定する

本機のTHDはフリーソフトを利用した簡易測定ですが、以下の通りでした

周波数(HzTHD(%)
1000.023
2000.023
5000.023
1K0.022
2K0.021
5K0.035
10K0.038

測定条件

  • 30Ωダミーロード(巻線抵抗)
  • 出力電圧 1Vrms (2.83Vp-p)
  • フリーソフト WaveGene Ver1.5 及び WaveSpectra Ver1.51
  • FFTサンプルデータ:131072/窓関数:Flat top
  • 入力レベル-10dB前後で測定(自作ATT使用)
  • オーディオインターフェイス SoundBlaster Premium HD

(注)サウンドインターフェイスを使用した簡易測定です、参考程度に御覧ください

※この1Vrmsという出力は、実際のヘッドホンでは爆音です

余談ですが、THDが1%近くあっても、聴感上は歪んでいるように聞こえません

実際にしばらくリスニングしてみる

普段使っているヘッドホンで、しばらく音楽を聞いてみるとなお良いですね

電子部品は新品の場合、しばらく電気を流して使ってあげないと、本来の性能がでない場合があります

(例えば、新品時は低音が出にくい、高音がこもる、キツイ音域があるなど、部品の癖があります)

(エージングと言って、アンプ以外にもスピーカーやヘッドホンなども同様です)

ガッツリやる必要はありませんが、しばらく聞いてみて、特に問題を感じなければOKです

シャーシ組込み(全景)

前面より、蓋を外した状態です

(クリックで拡大)

背面は、入力PINジャックと、アダプター用コネクタだけです

上の小箱は、市販のDACです

ケースに収まると、立派な見栄えになりますね

(思いっきり、自己満足ですが、本人が満足ならOK)

制作後記

私のところでは、写真の右側にある、USB-DACを組み合わせています

ES9018というチップを使った製品で、解像感はすごく良いのですが、

DAC単体では、低音がちょっと物足りなく、本体の「ヘッドホン端子」の接触もイマイチ良くない・・・「何か、残念クン」だったのですが!

このヘッドホンアンプと組合せると

かなり「良い感じ」です

ヘッドホンアンプを入れることで、低音の量感が増え、重心が下がった感じです

無音部分での静寂感も、向上した気がします

操作面では、6.3mmヘッドホンジャックや、ボリュームなど、

DAC単体では不満だった部分が解消

使っているうちに「これはなかなか」と、すっかり気に入ってしまいました

ブログネタにしている筆者が言うのもなんですが、実は、ちょっと嬉しい誤算でした

金属ケースに収める「本格的な電子工作」は、ホント、久々でしたが

何か、楽しい時間を過ごせました