電子工作で使われる、いろいろな種類のダイオード
その特徴をまとめてみました
ダイオードの基本的なことを知りたい方は、コチラのページです
ダイオードの種類
その特徴や用途により
いろいろなダイオードが製造されています
シリコンダイオード
シリコン半導体を「接合」して作られたダイオードです
シリコンダイオードの持つ、電流の「一方通行」の性質
「整流作用」が主な使い方です
用途はいろいろあります
- 交流から直流を得る「整流回路」
- 電子スイッチ
- ダイオードロジック
- レベルシフト
- 保護ダイオード
などなど・・・
シリコンダイオードの構造は、こちらで詳しく書いています
ゲルマニウムダイオード
半導体の材料に「ゲルマニウム」を使ったダイオードです
ゲルマニウム半導体とタングステン等を「点接触」した構造が多い
(PN接合タイプもある)
「点接触ゲルマニウムダイオード」は構造上、熱に弱いです
(ハンダ付けの熱に弱い代名詞的な部品)
ゲルマニウムを使った半導体は、現在のシリコン半導体が主流になる以前、ダイオードやトランジスターとして使われました
ゲルマニウムダイオードは、少電流時のVFが「0.1V~0.2V前後」と小さいので
AM波の検波ダイオードとして、昭和の鉱石ラジオキットでは、必ずといって良いほど見かけました
この赤帯、懐かしい方もいらっしゃるのでは・・・
写真の1N60は2023年3月現在、まだ入手可能です(秋月電子扱い)
一応、小信号用として、シリコンダイオードと同じような使い方もできますが
用途としては
- 検波回路(AM変調からの復調)
- 高周波回路
- エフェクター(歪み系エフェクターに使われる)
※近年は代替品として「ショットキーバリア・ダイオード」があります
ショットキーバリア・ダイオード
半導体と金属の「ショットキー接合」を利用したダイオードです
最近では新素材SiC(シリコンカーバイド)を使った素子もあります
順方向電圧が低く(0.4V位)スイッチング速度が早いことが特徴です
略して「SBD」などと記されることもあります
回路記号はカソードの線に「ヒゲ」がついた
このような記号です
写真はショットキーダイオードの「1N60」です
なんと!ゲルマニウムダイオードと同じ型番です
何か面白そうだったので、購入してみました(普通のSBDでした)
用途としては
- 高速スイッチング
- クランプダイオード(トランジスタースイッチの速度改善)
- 検波回路
などですが、近年では改良されて
- 整流回路(シリコンダイオードより、電圧降下が少ない)
でも使われています(通常の整流回路や、スイッチング電源回路など)
LED(発光ダイオード)
おなじみ、LED・発光ダイオードです
電球のフィラメントと違い、エネルギーを直接「光」に変換できるので、効率が良い(早い話、省エネです)
可視光域はもとより、「赤外線」、「紫外線」などで発光する品種もあります
(LEDとは別品種ですが、半導体レーザーなんていうのもありますね)
最近のLEDは「高輝度型」が多く市販され、「数mA」程度でもかなり明るく発光します
昔の教本みたいに10~20mA流すと「メチャまぶしい(+_+)」という場合もありますね
LEDはインジケータで使われるような小型タイプ以外にも
照明などに使われる大電力タイプもあります
家庭用照明や、自動車のライト類など、以前は電球や蛍光灯が主流だった分野も、今やLEDが普通になってきました
LED・・・今一番、開発が「アツい」分野かもしれませんね
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
シリコンダイオードなどは「順バイアス」で使われますが、
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は
「逆バイアス」で使います
ダイオードに「逆バイアス」を印加し、ある電圧を超えると「ツェナー降伏」や「雪崩降伏(アバランシェ降伏)」現象が発生し大電流が流れます
定電圧ダイオードは、これら現象が「低い電圧で発生」するよう、半導体の不純物量を加減して作られます
この降伏現象が起こっている間は、ダイオード両端電圧は「ほぼ一定」です
逆バイアスでの降伏現象(降伏電圧)の定電圧作用を積極的に使ったダイオードが
定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)というわけなのです
可変容量ダイオード(バリキャップ)
このダイオードも逆バイアスで使います
印加する「逆電圧」でダイオード端子間の静電容量が変化するダイオードです
ダイオードとコンデンサーが合体したような回路記号ですね
用途としては
- FMの変調や復調(FMラジオなど)
- 発振回路
- 周波数可変回路
などに使われます
参考:定電流ダイオード(CRD)
電圧をかけると一定の電流を流してくれる「定電流ダイオード(CRD)」
LEDの回路で使えば
- 抵抗計算不要
- 電圧が変化しても、電流が変わらない
- 電圧が十分なら、LED直列でも使用可能
という便利な素子なので
近年はLED点灯用によく使われます
この定電流ダイオード、「ダイオード」と名はついていますが・・・
実はこれ、FET(電界効果トランジスタ)という半導体の仲間です
接合型FETのソース(S)・ゲート(G)を同接続して
ドレイン(D)ーソース(S)間に電圧をかけると
一定の電流が流れます
無論、接合型FETを同様に接続しても「定電流回路」になります
ただ、接合型FETは「電流のバラツキ」が大きいので
目的の電流値を得るのに選別が必要かもしれません
電流値の揃ったものが必要な場合など、定電流ダイオードが良いですね
また、定電流ダイオードも半導体ですので、「定格」があります
高い電圧で使う場合など、定格オーバーにならないよう、注意が必要です
参考:フォトダイオード(フォトICダイオード)
光センサーとして使われます
現在は素子の中に「フォトダイオードと増幅用IC」が一体化されている製品があり
電子工作などで使うには、これらが圧倒的に便利です
いろいろなダイオードの順方向電圧(VF)を見る
手元にあったダイオードの順方向電圧(VF)を実測しました
ゲルマニウムダイオードは、50mA流すとかなり加熱したため、100mA測定は断念しました
こうして並べてみると、それぞれの特徴が良くわかりますね
回路図で「ダイオード」の使い方を見る
それでは百聞は一見にしかり・・・
簡単な回路図とシュミュレーション波形を見てみましょう
整流回路
電源などで、交流から直流を作るために使われます
これは、簡単な整流回路です(半波整流回路)
交流の片側だけをダイオードで取り出し、コンデンサーで平滑したものです
整流回路では「全波整流回路」もよく使われます
全波整流回路は、両側の波を取り出すので、より効率が良い方法です
整流回路で平滑コンデンサを付ける前の波形です
全波整流回路では交流両側の波が取り出されています
全波整流用に「ブリッジダイオード」もあります
パッケージ内で4本ダイオードが「ブリッジ接続」されています
スイッチング
機械スイッチの代わりに「電圧でON/OFF」する
「電子スイッチ」として使われます
電気信号ですので、機械スイッチより、はるかに高速動作です
また、機械的トラブルもありません
この回路では入力5Vですが、出力は3.3Vになっています
このように回路によっては、入力レベルの変換も同時にできます
異なる電圧から、マイコンなどの入力変換に便利な回路です
ダイオードマトリクス
スイッチやリレーなどで、複数の配線をON/OFFする場合
図のようなダイオードを含んだマトリクス回路を使う場合があります
この回路でダイオードが無いと、他のパターンを逆流して
意図しない出力が出てしまします
他の配線への廻り込みを防止する目的で、ダイオードが組込まれているわけです
ダイオードロジック
ダイオードのスイッチング回路を応用して、
簡単な論理回路を組むことも可能です
これはAND回路です
A・B2つの入力が「同時にON」の場合だけ
出力が「ON」になります
レベルシフト
電圧をずらす目的でダイオードを使います
前述の「スイッチング回路」もレベルシフトの一種ですね
ダイオードの順方向電圧降下(VF)を積極的に使った回路もあります
オーディオアンプのバイアス回路などに使われたりします
ダイオードを2本直列に使って、電圧をズラした波形を得ています
もっと大きくズラす場合、LEDなどを使う場合もあります
回路保護
静電気、サージなどから回路を守るために使われます
入力保護ダイオード
静電気に弱いMOS系の入力などに使われます
MOS-ICやMOS-FETなどの「パッケージ内部」に作り込まれる場合も多いです
還流ダイオード(フライホイール・ダイオード)
コイルやモーターなどをトランジスター等で駆動する場合
誘導性負荷の逆起電力から、半導体を守るためダイオードが使われます
この逆向きのダイオードは
「還流ダイオード」または「フライホイールダイオード」
と呼ばれます
逆電圧印加を防止する
電源の逆接続(電池の入れ間違い・接続間違い)から
回路を守るために使われるダイオードです
簡単な回路ですが、低い電圧の電源(乾電池など)では
ダイオードのVFを考慮しなければなりません
検波(AMの復調)
AM放送は「振幅変調(AM変調)」という方法を使って音声を電波に乗せています
この電波から、音声信号を抽出することを
検波(復調)と呼び、ラジオなどの無線受信機で使用されます
これは、500Hzの音声信号で、1000KHzの搬送波にAM変調をかけ
それをダイオード(SBD)で検波(復調)
コンデンサーで高周波成分を除き
元の500Hz音声信号に戻しました
以上、簡単な一例を見てきましたが
実際ダイオードは、これら以外にも、
いろいろな回路で、その特徴を生かした使い方をされています
まとめ
ダイオードは材質や構造によっていろいろな種類があります
そして、種類が違うダイオードは、特性も異なります
単なる整流作用以外にも、いろいろな機能を持ったダイオードが製造されており
様々な回路で使用されています