電子部品と回路

【種類と用途】電子工作で使う「ダイオード」

電子工作で使われる、いろいろな種類のダイオード

その特徴をまとめてみました

ここで書かれているのは

電子工作などでよく使われるダイオードと

その回路例の一部です

他にも「ダイオード」の種類はたくさんあります

また、用途もICの中身から、大きな電力分野(パワーエレクトロニクス)まで

多岐にわたっています

ダイオードの基本的なことを知りたい方は、コチラのページです

ダイオードをわかりやすく解説します 電子工作でよく使われる「ダイオード」について 初心者の方でも、わかり易くまとめました 電子工作でよく使われる「ダイ...

ダイオードの種類

その特徴や用途により

いろいろなダイオードが製造されています

シリコンダイオード

シリコン半導体を「接合」して作られたダイオードです

シリコンダイオードの持つ、電流の「一方通行」の性質

「整流作用」が主な使い方です

用途はいろいろあります

  • 交流から直流を得る「整流回路」
  • 電子スイッチ
  • ダイオードロジック
  • レベルシフト
  • 保護ダイオード

などなど・・・

電子工作など少電流(100μA~10mA位)で使う場合

シリコンダイオードの順方向電圧(VF)は、

0.6V~0.7V位

と見積もる場合が多いです

電子回路を勉強したい方は、ぜひ覚えておきたい値です

シリコンダイオードの構造は、こちらで詳しく書いています

ダイオードをわかりやすく解説します 電子工作でよく使われる「ダイオード」について 初心者の方でも、わかり易くまとめました 電子工作でよく使われる「ダイ...

ゲルマニウムダイオード

半導体の材料に「ゲルマニウム」を使ったダイオードです

ゲルマニウム半導体とタングステン等を「点接触」した構造が多い

(PN接合タイプもある)

「点接触ゲルマニウムダイオード」は構造上、熱に弱いです

(ハンダ付けの熱に弱い代名詞的な部品)

ゲルマニウムを使った半導体は、現在のシリコン半導体が主流になる以前、ダイオードやトランジスターとして使われました

ゲルマニウムダイオードは、少電流時のVFが「0.1V~0.2V前後」と小さいので

AM波の検波ダイオードとして、昭和の鉱石ラジオキットでは、必ずといって良いほど見かけました

この赤帯、懐かしい方もいらっしゃるのでは・・・

写真の1N60は2023年3月現在、まだ入手可能です(秋月電子扱い)

一応、小信号用として、シリコンダイオードと同じような使い方もできますが

用途としては

  • 検波回路(AM変調からの復調)
  • 高周波回路
  • エフェクター(歪み系エフェクターに使われる)

※近年は代替品として「ショットキーバリア・ダイオード」があります

ショットキーバリア・ダイオード

半導体と金属の「ショットキー接合」を利用したダイオードです

最近では新素材SiC(シリコンカーバイド)を使った素子もあります

順方向電圧が低く(0.4V位)スイッチング速度が早いことが特徴です

略して「SBD」などと記されることもあります

回路記号はカソードの線に「ヒゲ」がついた

このような記号です

写真はショットキーダイオードの「1N60」です

なんと!ゲルマニウムダイオードと同じ型番です

何か面白そうだったので、購入してみました(普通のSBDでした)

用途としては

  • 高速スイッチング
  • クランプダイオード(トランジスタースイッチの速度改善)
  • 検波回路

などですが、近年では改良されて

  • 整流回路(シリコンダイオードより、電圧降下が少ない)

でも使われています(通常の整流回路や、スイッチング電源回路など)

LED(発光ダイオード)

おなじみ、LED・発光ダイオードです

電球のフィラメントと違い、エネルギーを直接「光」に変換できるので、効率が良い(早い話、省エネです)

可視光域はもとより、「赤外線」、「紫外線」などで発光する品種もあります

(LEDとは別品種ですが、半導体レーザーなんていうのもありますね)

最近のLEDは「高輝度型」が多く市販され、「数mA」程度でもかなり明るく発光します

昔の教本みたいに10~20mA流すと「メチャまぶしい(+_+)」という場合もありますね

【LED抵抗】発光ダイオード「電流制限抵抗」の選び方、付け方 スイッチONで「ランプ点灯!」 昔から、電子工作の入門としては、これ定番中の定番ですよね それに最近は、光るものの多くは「...

LEDはインジケータで使われるような小型タイプ以外にも

照明などに使われる大電力タイプもあります

家庭用照明や、自動車のライト類など、以前は電球や蛍光灯が主流だった分野も、今やLEDが普通になってきました

LED・・・今一番、開発が「アツい」分野かもしれませんね

定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)

シリコンダイオードなどは「順バイアス」で使われますが、

定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)は

「逆バイアス」で使います

ダイオードに「逆バイアス」を印加し、ある電圧を超えると「ツェナー降伏」や「雪崩降伏(アバランシェ降伏)」現象が発生し大電流が流れます

定電圧ダイオードは、これら現象が「低い電圧で発生」するよう、半導体の不純物量を加減して作られます

この降伏現象が起こっている間は、ダイオード両端電圧は「ほぼ一定」です

(クリックで拡大)

逆バイアスでの降伏現象(降伏電圧)の定電圧作用を積極的に使ったダイオードが

定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)というわけなのです

大きな電流を取出したい場合は

トランジスターやICなどを併用します

可変容量ダイオード(バリキャップ)

このダイオードも逆バイアスで使います

印加する「逆電圧」でダイオード端子間の静電容量が変化するダイオードです

ダイオードとコンデンサーが合体したような回路記号ですね

用途としては

  • FMの変調や復調(FMラジオなど)
  • 発振回路
  • 周波数可変回路

などに使われます

参考:定電流ダイオード(CRD)

電圧をかけると一定の電流を流してくれる「定電流ダイオード(CRD)」

LEDの回路で使えば

  • 抵抗計算不要
  • 電圧が変化しても、電流が変わらない
  • 電圧が十分なら、LED直列でも使用可能

という便利な素子なので

近年はLED点灯用によく使われます

この定電流ダイオード、「ダイオード」と名はついていますが・・・

実はこれ、FET(電界効果トランジスタ)という半導体の仲間です

接合型FETのソース(S)・ゲート(G)を同接続して

ドレイン(D)ーソース(S)間に電圧をかけると

一定の電流が流れます

定電流ダイオードやFETで

「定電流作用」を安定して得るためには

ダイオード(FET)両端に3V以上の電圧が必要です

無論、接合型FETを同様に接続しても「定電流回路」になります

ただ、接合型FETは「電流のバラツキ」が大きいので

目的の電流値を得るのに選別が必要かもしれません

電流値の揃ったものが必要な場合など、定電流ダイオードが良いですね

定電流ダイオードでも、それなりのバラツキはあります

また、定電流ダイオードも半導体ですので、「定格」があります

高い電圧で使う場合など、定格オーバーにならないよう、注意が必要です

参考:フォトダイオード(フォトICダイオード)

光センサーとして使われます

(クリックで拡大)

現在は素子の中に「フォトダイオードと増幅用IC」が一体化されている製品があり

電子工作などで使うには、これらが圧倒的に便利です

いろいろなダイオードの順方向電圧(VF)を見る

手元にあったダイオードの順方向電圧(VF)を実測しました

(クリックで拡大)

ゲルマニウムダイオードは、50mA流すとかなり加熱したため、100mA測定は断念しました

こうして並べてみると、それぞれの特徴が良くわかりますね

回路図で「ダイオード」の使い方を見る

それでは百聞は一見にしかり・・・

簡単な回路図とシュミュレーション波形を見てみましょう

整流回路

電源などで、交流から直流を作るために使われます

(クリックで拡大)

これは、簡単な整流回路です(半波整流回路)

交流の片側だけをダイオードで取り出し、コンデンサーで平滑したものです

整流回路では「全波整流回路」もよく使われます

全波整流回路は、両側の波を取り出すので、より効率が良い方法です

(クリックで拡大)

整流回路で平滑コンデンサを付ける前の波形です

全波整流回路では交流両側の波が取り出されています

全波整流用に「ブリッジダイオード」もあります

パッケージ内で4本ダイオードが「ブリッジ接続」されています

スイッチング

機械スイッチの代わりに「電圧でON/OFF」する

「電子スイッチ」として使われます

(クリックで拡大)

電気信号ですので、機械スイッチより、はるかに高速動作です

また、機械的トラブルもありません

この回路では入力5Vですが、出力は3.3Vになっています

このように回路によっては、入力レベルの変換も同時にできます

異なる電圧から、マイコンなどの入力変換に便利な回路です

ダイオードスイッチは

機械スイッチから見れば十分高速ですが

実は・・・デジタルICから見ると、かなり低速です

ダイオードマトリクス

(クリックで拡大)

スイッチやリレーなどで、複数の配線をON/OFFする場合

図のようなダイオードを含んだマトリクス回路を使う場合があります

(クリックで拡大)

この回路でダイオードが無いと、他のパターンを逆流して

意図しない出力が出てしまします

(クリックで拡大)

他の配線への廻り込みを防止する目的で、ダイオードが組込まれているわけです

ダイオードロジック

ダイオードのスイッチング回路を応用して、

簡単な論理回路を組むことも可能です

(クリックで拡大)

これはAND回路です

A・B2つの入力が「同時にON」の場合だけ

出力が「ON」になります

レベルシフト

電圧をずらす目的でダイオードを使います

前述の「スイッチング回路」もレベルシフトの一種ですね

ダイオードの順方向電圧降下(VF)を積極的に使った回路もあります

オーディオアンプのバイアス回路などに使われたりします

(クリックで拡大)

ダイオードを2本直列に使って、電圧をズラした波形を得ています

もっと大きくズラす場合、LEDなどを使う場合もあります

回路保護

静電気、サージなどから回路を守るために使われます

入力保護ダイオード

静電気に弱いMOS系の入力などに使われます

MOS-ICやMOS-FETなどの「パッケージ内部」に作り込まれる場合も多いです

還流ダイオード(フライホイール・ダイオード)

(クリックで拡大)

コイルやモーターなどをトランジスター等で駆動する場合

誘導性負荷の逆起電力から、半導体を守るためダイオードが使われます

この逆向きのダイオードは

「還流ダイオード」または「フライホイールダイオード」

と呼ばれます

逆電圧印加を防止する

(クリックで拡大)

電源の逆接続(電池の入れ間違い・接続間違い)から

回路を守るために使われるダイオードです

簡単な回路ですが、低い電圧の電源(乾電池など)では

ダイオードのVFを考慮しなければなりません

同様の考え方で、LEDを逆電圧から守ることもできます

検波(AMの復調)

AM放送は「振幅変調(AM変調)」という方法を使って音声を電波に乗せています

この電波から、音声信号を抽出することを

検波(復調)と呼び、ラジオなどの無線受信機で使用されます

(クリックで拡大)

これは、500Hzの音声信号で、1000KHzの搬送波にAM変調をかけ

それをダイオード(SBD)で検波(復調)

コンデンサーで高周波成分を除き

元の500Hz音声信号に戻しました

以上、簡単な一例を見てきましたが

実際ダイオードは、これら以外にも、

いろいろな回路で、その特徴を生かした使い方をされています

まとめ

ダイオードは材質や構造によっていろいろな種類があります

そして、種類が違うダイオードは、特性も異なります

単なる整流作用以外にも、いろいろな機能を持ったダイオードが製造されており

様々な回路で使用されています