前記事で、LEDの点灯させかた(抵抗の計算)を書きましたが・・・
スイッチONで、LEDが点灯するだけでは、あまり面白くないのですよね
そこで、電子工作らしくICを使った「アナログタイマー」を作ってみました
電子工作で、よく使われるICの一つに「555」という型番のものがあります
通称「タイマーIC」とか「555IC(NE555)」と呼ばれるもので、
少ない部品で、アナログタイマー(単発のパルス波)や方形波(四角い波)発振に使えるICです
アナログタイマー回路や、LED点滅回路(Lチカ)だけでなく色々応用ができます
ブレッドボードを使えば、はんだ付け不要で、ICの回路も簡単に組めますので
ぜひ、タイマーIC(555IC)を使った電子工作に、チャレンジしてみてください
このページでは、555IC(NE555)の「ワンショットパルス」を応用した「アナログタイマー」について解説しています
555ICの「連続発振」を応用した「LED点滅」については、コチラをご覧ください
また、LEDを使う上で欠かせない「抵抗値」の計算は、コチラに書きました
「アナログタイマー」と「デジタルタイマー」
タイマーと言ったら、数字がカウントされる「キッチンタイマー」みたいなものを想像しますよね。
私達の周りでよく見かけるこれらは、「デジタルタイマ」ーです
デジタルタイマーは、正確に発振されたパルスを数えることで時間を決めますが、
アナログタイマーは、「抵抗を通してコンデンサーに電気を貯める」ことで、時間を決めます
簡単に言えば「デジタルタイマー」は、一定時間に一個づつ飛んでくるボールの個数を数えるイメージですが、
「アナログタイマー」は水道の蛇口を調節して、バケツがいっぱいになるまで待つイメージです
デジタルに比べて、細かい時間を設定するのは不向きですが、専用のタイマーIC(555)を使えば、少ない部品でタイマー回路が作れます
(機会があればデジタルタイマーの記事もやりたいと思ってます)
タイマーIC 555(NE555)とは
1972年にシグネティクス社(現NXP社)から発表されたIC(NE555)です
セカンドソース品(ライセンスを得て別社が製造)が国内外メーカーから、多数販売されています
555IC(NE555)は、
- タイマー回路等に応用される「単安定モード」(ワンショットパルス)
- 一定周波数を連続発振させる「無安定モード」(方形波発振)
という「2つの機能」を持ったICです
555IC(NE555)は、使いやすさ、安定性の他に加え、価格の安さや供給の安定などもあり、古い設計のICながら、現行生産(2022年現在)されています
また、CMOS版(トランジスターの代わりにMOS-FETを使っている)も製造されています
CMOS版はバイポーラ版に比べ、低消費電力、低電圧動作、高速化などスペックアップされています
555IC(NE555)の特徴
- オリジナル品は、バイポーラ(トランジスタ)構造のIC
- 改良版のCMOS構造品もあり(低消費電力、低電圧動作、高速化)
- 幅広い電圧4.5V~15Vで動作(CMOS版はさらに低い電圧で動作可)
- 10μS~1000S位で使われる、ワンショットパルス生成(タイマー)機能
- 方形波発振機能(条件によるが、数百KHzまで可)
- 出力電流が大きい※(100~200mA メーカーや製造プロセスにより異なる)
といった特徴をそなえています
タイマーに使える「単安定モード」
単安定モードは「単発のパルス(ワンショットパルス)」を発生させる機能です
ICに接続されたC(コンデンサー)とR(抵抗)によって、パルスの幅(時間)を変更できます(数μS~1000S位までがよく使われます)
ICの2PIN(トリガー端子)の「立ち下がりエッジ」でパルス発生をスタートします
出力は「単発の正パルス」で、ICの3PIN(OUT)に出力されます
パルス幅(タイマー時間)の求め方
パルスの幅(時間)は、ICの6、7ピンに接続された抵抗(R2)と、コンデンサ(C1)の値により変化します
C1容量 | R2抵抗値 | パルス幅 |
100μF | 10KΩ | 1.1秒 |
220μF | 22KΩ | 5.3秒 |
470μF | 100KΩ | 51.3秒 |
単安定モードを使った「アナログタイマー」回路図
SWを押すと、R2とC1で設定した時間LEDが点灯するタイマーです
「555」ICは、出力電流が大きく(定格電流100~200mA位)LEDを直接点灯できます
※出力はHレベルの電流吐出し、Lレベルの電流吸込どちらも可能です
もっと大きな電流を扱いたい場合、トランジスタなどを使います
トランジスタのスイッチング回路(バッファ)設計方法はこちらの記事に書きました
ブレッドボードに組んでみる
ブレッドボードでの「部品実装図」です。電源は5Vを使っています
ブレッドボードの組み立て例
実際に組み立ててみました
部品実装図とは、部品位置が若干異なっていますが、配線は同じです
写真で電源は、安定化電源を使っています(5V、定電圧モード)
手持ち部品の関係で
- パスコン0.1μFはフィルム(マイラ)コンデンサ
- パスコン(電源ライン)に33μFの電解コンデンサ
- 5PIN 0.01μFもフィルム(マイラ)コンデンサ
- R4(4.7KΩ→4.99KΩ)
- C1=100μF R2=22KΩ (約2.4秒)
となっています
部品表
NE555(またはセカンドソース品) | タイマーIC | 1 |
LED | (色はお好みで) | 1 |
抵抗:470Ω | R1:LED抵抗 | 1 |
抵抗:22KΩ | R2 | 1 |
抵抗:10KΩ | R3 | 1 |
抵抗:4.7KΩ | R4 | 1 |
電解コンデンサ:100μF | C1 | 1 |
電解コンデンサ:10~100μF | パスコン | 1 |
セラミック/フィルムコンデンサ:0.1μF | パスコン | 1 |
セラミック/フィルムコンデンサ:0.01μF | PIN5接続用 | 1 |
SW | 押ボタンタイプ | 1 |
電子部品以外に必要なもの
- ブレッドボード
- ジャンパワイヤー
- 電源(5V)
パスコンをお忘れなく
電源の入り口に付けられたコンデンサー(10~100μF)と、IC直近に付けられた0.1μFは「パスコン」と呼ばれる部品です
このコンデンサー(パスコン)は、一見不要に見えますが、回路を安定動作させるための重要なパーツです
基本中の基本ゆえ、Web記事などの回路図では、入れることを理解しているとして、省略されていたりしますが「必ず」入れましょう
パスコンの基本は、容量の異なるコンデンサーを組合せて使います
※小さな容量(0.1μF位がよく使われる)は、ICの直近に入れます
※中容量(10μF前後)はブロック単位でも大丈夫です
※大容量のものは、離れて配置しても効果があります
今回、私の実験環境では、0.1μFは入っていましたが発振を起こしました
(10μF以上を電源に入れたら止まりました)
LEDが高速で点滅していたので、すぐ気づきましたが、わかりにくい場合も少なくありません
(異常発振の周波数が高くなると、LEDが点灯しっぱなしに見えます)
また、近年の半導体は、簡単に100MHz以上で異常発振を起こすこともあります(発見が難しいです)
異常発振以外にも、誤動作や不安定動作などの原因になります
半導体の電源には、パスコンをお忘れなく
コンデンサーについて、詳しくはコチラをご覧ぐださい
タイマー時間(パルス幅)を可変するには
R2に直列にボリューム(VR・可変抵抗器)を入れればOKです
(手持ち部品の関係で、20KΩの2連のボリュームを使いました)
まとめ
- 「NE555」ICは、歴史ある「タイマー・発振機能IC」です
- 「単安定モード」は単発パルスを生成し、タイマーに使えます
- パルス幅は、ICに接続された「コンデンサー」と「抵抗」で決まります
- タイマー時間(秒)=パルス幅=1.1✕R2✕C1 です
- 出力も大きく、LEDなどを直接ドライブできます
簡単ですので、「アナログタイマー」を是非作って、遊んでみて下さい